志賀直哉旧居 (奈良市高畑)

志賀直哉旧居：白樺派の文人サロンと、若草山を望む静寂の空間

奈良市高畑町に位置する志賀直哉旧居は、白樺派を代表する小説家、志賀直哉が昭和4年から10年間を過ごした旧宅です。数寄屋造りをベースに、洋風や中国風の要素も取り入れた独特の建築様式が特徴で、現在は国の登録有形文化財に指定されています。

建築と空間：数寄屋とモダニズムの融合

1929年（昭和4年）に完成したこの建物は、志賀直哉自身の設計思想が反映されています。数奇屋風の落ち着いた書斎からは、奈良公園や若草山を借景とした美しい庭園を望むことができ、創作活動に最適な環境が整えられています。葦簀張りの天井や、開放的なサンルーム、娯楽室、茶室など、モダンでありながら快適な生活空間が巧みに配置されています。

和風の趣と洋風建築の要素が調和した空間は、単なる住居という枠を超え、志賀直哉の感性と生活様式を反映した、独特の雰囲気を醸し出しています。

高畑サロン：文人、芸術家が集う交流の場

志賀直哉の旧居は、多くの文化人や芸術家が集うサロンとして知られていました。「高畑サロン」と呼ばれたこの空間では、武者小路実篤、小林秀雄、尾崎一雄といった白樺派の文豪をはじめ、画家、陶芸家など、多様な分野の著名人が交流し、活発な議論が交わされました。

志賀直哉の温かい人柄と、この場所が持つ独特の雰囲気は、創造的な議論と芸術活動を育む場となり、日本の文化史に重要な足跡を残しました。

作品と創作環境

志賀直哉はこの旧居で、『暗夜行路』を始め、『痴情』『プラトニック・ラブ』『邦子』など多くの代表作を執筆しました。静寂に包まれた書斎、そして美しい庭園は、彼の創作活動に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。窓から眺める若草山や奈良公園の風景は、彼の作品世界にも反映されているのではないでしょうか。

現在：文学館とセミナーハウスとして

現在は一般公開され、多くの人が訪れる文学館となっています。また、学校法人奈良学園のセミナーハウスとしても利用されており、静かで落ち着いた環境を求める様々なイベントや研修にも利用されています。

改修工事を経て、昭和初期の姿を可能な限り再現した建物は、歴史的価値と文化的意義を後世に伝える貴重な存在です。

アクセスと周辺情報

近鉄奈良駅またはJR奈良駅より奈良交通バスでアクセス可能です。周辺には、高畑茶論、春日大社、奈良公園など、観光スポットも点在しています。奈良を訪れた際には、ぜひ志賀直哉旧居を訪れ、白樺派の文人たちゆかりの空間と、美しい景観に触れてみてください。

年表と主な来訪者

1925年: 京都山科から奈良市幸町へ転居
1929年: 奈良市高畑町へ転居、旧居完成
1938年: 東京へ転居

主な来訪者には、小林多喜二、武者小路実篤、小林秀雄、尾崎一雄、入江泰吉、亀井勝一郎などがいます。

利用情報（2023年7月現在）

開館時間: 午前9時30分～午後5時30分（3月～11月）、午前9時30分～午後4時30分（12月～2月）
休館日: 年末年始（12月28日～1月5日）
入館料: 一般350円、中学生200円、小学生100円（団体割引あり）

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