忘れえぬ慕情 (1956年の映画)

忘れえぬ慕情

『忘れえぬ慕情』（わすれえぬぼじょう、フランス語: Typhon sur Nagasaki）は、1956年に公開された日本とフランスの合作映画です。監督はイヴ・シャンピ、主演は岸恵子、ダニエル・ダリュー、ジャン・マレーが務め、長崎を舞台に日仏スターが共演した悲恋物語として知られています。『忘れえぬ慕情 Printemps à Nagasaki』というタイトル表記も見られます。イーストマン・カラーによる美しい色彩も特徴です。

ストーリー

長崎の造船所に赴任してきたフランス人技師ピエール・マルサックは、呉服屋の女主人である櫻井乃里子と出会い、二人は深く愛し合うようになります。しかし、ある日、ピエールの元恋人であるフランス人女流作家フランソワーズが取材のため長崎にやってきます。

乃里子を愛しながらもフランソワーズへの未練を断ち切れないピエールは、大阪出張に同行したフランソワーズと密会し、乃里子に嘘をついてしまいます。しかし、フランソワーズのために誂えた呉服がホテルに届けられた際、乃里子はピエールの嘘に気付きます。乃里子は深く傷つき、長崎に戻ったピエールに別れを告げます。

フランソワーズとよりを戻したものの、彼女のキャリアを捨ててでも一緒にいたいという言葉にピエールは戸惑います。そんな中、長崎を巨大な台風が襲います。フランソワーズと避難していたピエールは、乃里子の身を案じ、フランソワーズを残して乃里子の家へ向かいます。激しい暴風雨の中、ようやく乃里子の家にたどり着いたピエールを、乃里子は受け入れます。二人は改めて愛を確認し合いますが、その時、崩れてきた梁の下敷きになり、乃里子はピエールの腕の中で息を引き取ります。

愛する乃里子を失ったピエールは、彼女との思い出が残る長崎に留まることを決意し、フランソワーズはフランスへ帰国します。この悲劇的な結末は、観る者の心に深い余韻を残します。

キャスト

櫻井乃里子: 岸恵子
呉服屋の女主人。フランス文学を学んでいた過去を持つ。両親亡き後、店を切り盛りし、妹と弟の面倒を見ている。
フランソワーズ・ファーブル: ダニエル・ダリュー
フランス人女流作家。ピエールの元恋人。
ピエール・マルサック: ジャン・マレー
長崎の造船所に赴任してきたフランス人技師。
カルル・リッテル: ゲルト・フレーベ
乃里子のフランス語教師。ドイツ系スイス人。元柔道選手。
堀: 山村聡
造船所の技師長。フランス語が堪能でピエールの話し相手。
櫻井冴子: 野添ひとみ
乃里子の妹。結婚間近。
慶子・リッテル: 浅茅しのぶ
リッテルの妻。乃里子の友人。
藤田: 浦辺粂子
乃里子の店で働く女性。

その他、関千恵子、木田勝二、桂小金治、山本和子、森川まさみ、加賀ちか子、葵やよひ、宝とも子などが出演しています。

エピソード

この映画がきっかけとなり、イヴ・シャンピ監督と岸恵子は1957年に結婚しました（1975年に離婚）。

撮影はすべて日本国内で行われました。ダニエル・ダリューは1956年3月30日に来日し、約3ヶ月間滞在して撮影に臨みました。ロケは小田原などで行われ、7月11日に撮影を終えて帰国しました。製作費は当時の金額で4億8千万円でした。

受賞歴

日本映画技術賞 特殊技術賞 - 川上景司

関連事項

蝶々夫人

外部リンク

Typhon sur Nagasaki (1957) Films de France（英語）
忘れえぬ慕情 - allcinema
忘れえぬ慕情 Printemps a Nagasaki - KINENOTE
Typhon sur Nagasaki - オールムービー（英語）
* Typhon sur Nagasaki - IMDb（英語）

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