忘れられた被災地

忘れられた被災地

「忘れられた被災地」とは、大規模な災害において、最も被害の大きかった地域に注目が集まる一方で、甚大な被害を受けながらも、その実態が十分に認識されない被災地を指す言葉です。特に、東日本大震災における茨城県が、この言葉で語られる代表的な例として挙げられます。

東日本大震災における茨城県の被害

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、岩手・宮城・福島といった東北地方の太平洋沿岸部が甚大な被害を受けました。しかし、関東地方の茨城県もまた、無視できないほどの被害に見舞われました。地震による強い揺れに加え、茨城県沖を震源とする最大余震も発生し、沿岸部では津波による甚大な被害が発生しました。

地震と津波による被害

県内では、最大震度6強を観測。死者・行方不明者は66名に上り、住宅の全半壊・一部破損は20万軒を超える被害となりました。特に太平洋沿岸地域では津波の被害が大きく、北茨城市の名勝である五浦六角堂が流失するなどの被害に見舞われました。また、高萩市、日立市、ひたちなか市、大洗町、神栖市など、多くの市街地が津波によって浸水しました。

液状化現象による被害

液状化現象も広範囲で発生し、特に霞ヶ浦・北浦南岸から利根川下流一帯では、潮来市、神栖市、鹿嶋市、稲敷市などで被害が大きくなりました。液状化現象による住宅被害は1万戸弱にも及び、その復旧には長い時間を要しました。

原発事故の影響

東海村にある日本原子力発電・東海第二原発も、最大5.4メートルの津波に襲われましたが、新設された防護壁が浸水を防ぎ、全電源喪失という最悪の事態は免れました。しかし、福島第一原発事故の影響により、茨城県産の農産物などが海外輸出規制の対象となるなど、経済的な影響も深刻でした。

インフラへの被害

行方市では鹿行大橋が崩落し、1名が犠牲になるなど、道路網も県内各地で大きな被害を受けました。また、JR東日本の路線をはじめ、多くの鉄道も被害を受け、交通網が寸断されました。つくば市の筑波研究学園都市では、多くの国の研究機関が被害を受け、実験施設や研究設備に甚大な損害が発生しました。

計画停電の問題

甚大な被害を受けたにもかかわらず、茨城県では東京電力による計画停電が実施されました。当時の茨城県知事が、東京電力に対して強く抗議したものの、東京都区部では計画停電が実施されなかったことなどから、被災地の状況を考慮せずに事務的に停電地域が決定されたと批判を浴びました。その結果、茨城県は「忘れられた被災地」という認識が広まる一因となりました。

情報発信の偏り

茨城県は関東圏に位置するにもかかわらず、県域民放テレビ局が存在しないため、ローカルニュースの情報発信力が低い状況にあります。また、全国紙やテレビにおける都道府県名の登場割合でも、福島県や宮城県と比較して低い数値となっています。これらの要因が重なり、茨城県の被災状況が十分に伝えられなかったと考えられます。

その他の「忘れられた被災地」の例

東日本大震災以外にも、「忘れられた被災地」という言葉は、以下のような事例で使用されています。

東日本大震災直後の長野県北部地震による長野県栄村
東日本大震災における都心湾岸部
東日本大震災における千葉県旭市
2018年の大阪府北部地震における茨木市
* 2019年の令和元年房総半島台風における千葉県鋸南町

まとめ

「忘れられた被災地」という言葉は、災害発生時の情報発信の偏りや、支援の不均衡など、様々な課題を浮き彫りにします。東日本大震災における茨城県の事例は、これらの課題を考える上で、重要な教訓を与えてくれると言えるでしょう。

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