忠貞王

忠貞王（たださだおう）は、平安時代初期から前期にかけて活躍した皇族です。弘仁11年（820年）に生まれ、元慶8年（884年）に65歳で亡くなりました。桓武天皇の皇孫であり、二品・賀陽親王の子として生まれました。

経歴

文徳天皇の治世末期、天安2年（858年）に二世王として従四位下に叙せられました。清和天皇の治世に入ると、貞観3年（861年）には大学頭、貞観5年（863年）には中務大輔と、京官を歴任しました。その後、貞観6年（864年）には摂津守に任ぜられ地方官へと転じ、その任期中の貞観9年（867年）には従四位上に昇叙しました。

貞観12年（870年）には弾正大弼として再び京官に戻りますが、翌年には大和守、貞観14年（872年）には播磨守、貞観19年（877年）には正四位下・河内守と、清和朝後半から陽成朝初期にかけて再び地方官を歴任しました。元慶3年（879年）には参議に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たし、議政官として宮内卿や刑部卿などを兼務しました。そして、元慶8年（884年）8月27日にその生涯を終えました。

最終的な官位は、参議刑部卿正四位下兼行近江守でした。

人物

忠貞王は、容貌こそ醜かったものの、非常に高い志を持っていたと伝えられています。幼い頃から学問に励み、大学で『五経』をほぼ読破するほどの知識を有していました。官吏としての才能も高く評価され、地方官として各地を転々としましたが、その硬軟を兼ね備えた政治手腕によって民を上手く統制したとされています。また、その美声は朝廷の中でも最も優れていると評されました。

官歴

以下は忠貞王の主な官歴です。注記のないものは『六国史』に拠ります。

天安2年（858年）正月7日：従四位下（直叙）
貞観3年（861年）3月8日：大学頭
貞観5年（863年）2月16日：中務大輔
貞観6年（864年）正月16日：摂津守
貞観9年（867年）正月7日：従四位上
貞観12年（870年）2月21日：弾正大弼
貞観13年（871年）正月29日：大和守
貞観14年（872年）4月6日：播磨守
貞観19年（877年）正月3日：正四位下。正月15日：河内守
元慶2年（878年）8月14日：大和守
元慶3年（879年）10月25日：参議
元慶4年（880年）2月21日：宮内卿
元慶5年（881年）2月15日：刑部卿兼美濃権守
元慶6年（882年）2月3日：兼近江守、刑部卿如元
* 元慶8年（884年）8月27日：卒去（参議刑部卿正四位下兼行近江守）

忠貞王は、その多彩な才能と人となりによって、平安時代初期の歴史に名を刻んだ人物であると言えるでしょう。

もう一度検索