忠魂義烈 実録忠臣蔵

忠魂義烈 実録忠臣蔵

『忠魂義烈 実録忠臣蔵』は、1928年に公開された日本のサイレント映画であり、監督はマキノ省三です。この作品は、44年前から続く忠臣蔵の物語を、牧野監督の集大成として描いたものです。彼はこのジャンルにおいて何度もリメイクを行い、1910年の作品以来の経験をもとに、忠臣蔵の決定版として本作を制作しました。

作品の背景と制作

本作は1927年の1月から製作が始まり、当時の松竹や帝国キネマも同題材の映画を制作していたことから、三社による競作は広く注目を集めました。新たに設立された「マキノ・プロダクション中部撮影所」では、名古屋に特設セットが建設され、撮影が行われるなど、スケールの大きさが感じられます。

本作に関わったスタッフには、当時若き日のマキノ正博や、監督補の秋篠珊次郎（井上金太郎を名乗る）などが名を連ねており、映画制作に多くの若手が関わっていたことも注目されています。しかし、制作過程では、協力監督の沼田紅緑が不幸にも病に倒れ、35歳という若さで命を落としました。

キャスティングの困難

本作の主役である大石内蔵助のキャスティングでは、様々な.actorが検討されましたが、松竹からの妨害により、代わりに新派劇の俳優である伊井蓉峰が起用されることになりました。しかし、彼の自己中心的な演技スタイルは、監督の牧野省三にとっては命題的な悩みの種となり、彼はこの作品を失敗作と見なすに至ります。出演者の一人、嵐長三郎はその態度について厳しい贈り物をし、伊井の演技が作品に悪影響を与えたと語っています。

火災とその影響

1928年3月6日、編集作業中に火災が発生し、多くのフィルムと牧野の自宅が焼失しました。この出来事は牧野及びそのスタッフに深い影響を与え、彼は冷静にその事実を受け入れたものの、「『忠臣蔵』が焼けたのは良かった」と述べたといいます。妻が陣頭指揮をとり、残ったフィルムを編集することで、14日には何とか公開に漕ぎ着けましたが、短縮された作品となってしまいました。

再編集とその後

1968年には再編集版が製作され、近年の映画鑑賞会においても新たな形で展示されました。この再編集版には、元の作品と新しいシーンがつなぎ合わされ、さらなる注目を集めています。伝説的な物語である忠臣蔵を描いたこの映画は、形を変えながらも日本映画の歴史において重要な一角を占め続けています。

まとめ

『忠魂義烈 実録忠臣蔵』は、日本の映画史において重要な位置を占める作品であり、牧野省三の情熱と挑戦を象徴するものです。サイレント映画という形式を通じて、伝統的な物語を新たに表現する試みが行われ、その後の映画製作に影響を与える礎となりました。

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