快舟

快舟（Kuaizhou）

快舟（かいしゅう）は、中華人民共和国が開発・運用する固体燃料を使用する衛星打ち上げロケットのシリーズです。災害発生時など、緊急のニーズに応じた迅速な地上監視や通信インフラの展開を主な目的として設計されたと考えられています。開発にはハルビン工業大学が深く関わったとされており、中国航天科工集団公司も関連組織として挙げられています。このロケットシリーズは、その小型であること以外、形状や詳しい性能などの諸元はほとんど公表されておらず、その実態には謎が多いとされています。

開発と初期の飛行

快舟シリーズの最初のモデルである快舟一号は、2013年9月25日に中国の酒泉衛星発射センターから初めて宇宙へと旅立ちました。続いて、2014年11月21日には快舟二号が打ち上げられ、この際には災害観測衛星が搭載されたと伝えられています。これらの初期の打ち上げは、コンセプトである緊急対応能力の実証を意図したものと考えられます。

新しいモデルと性能向上への試み

シリーズは改良が進み、2017年には快舟1号をベースとした性能向上型の快舟1号甲が開発されました。これとは別に、より大型で高能力を目指した快舟11号の開発が2015年に表明されました。快舟11号では、輸送能力をこれまでのモデルの約5倍に拡大し、離陸重量を78トンとすることで、近地球軌道（LEO）へ最大約1.5トンのペイロードを運ぶことを目標としました。加えて、打ち上げコストを1キログラムあたり1万ドル以下に抑えるという、経済性にも焦点を当てた開発が進められました。当初は2016年末から2017年初頭にかけて初の打ち上げが計画されていましたが、計画は遅延し、最終的に2020年7月10日に初めての打ち上げが行われました。この記念すべき初飛行には、動画プラットフォームであるビリビリ動画が利用する衛星が搭載されましたが、残念ながら打ち上げは失敗に終わりました。これは快舟シリーズとして初の失敗事例となりました。

技術的な特徴

快舟一号（KZ-1A）などのモデルに見られる技術的な特徴は、シンプルさとコスト削減を重視した設計思想を反映しています。

固定式ノズル: 推力偏向システムを持たず、全ての段で固定式のノズルを使用しています。これは、複雑な機構を排することで信頼性向上やコスト削減に寄与すると考えられます。
姿勢制御の統合: 1段目には空気力学的な補助を行うグリッドフィンが備わっています。さらに、4段目には推進剤として四酸化二窒素（N₂O₄）とモノメチルヒドラジン（MMH）を用いるサイドスラスター式の統合推進・姿勢制御サブシステムが搭載されています。特筆すべきは、このサブシステムが4段目だけでなく、2段目と3段目の姿勢制御も兼ねている点です。これにより、2段目と3段目から独立した姿勢制御装置を省くことができ、部品点数を減らし、結果としてロケット全体の低コスト化を実現しています。

関連する開発

快舟と類似したコンセプトを持つ開発として、トレーラー型の移動式発射機を備えた小型ロケット「FT-1」（Feitian-1、飛天）の模型が、2014年11月に一般に公開されたことがあります。

快舟シリーズは、その機動性と即応性から、特に緊急時における小型衛星の打ち上げ手段として独自の地位を確立しています。今後の技術発展や打ち上げ実績の積み重ねが注目されるロケットシリーズです。

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