怒りの倫理学

『怒りの倫理学』：欲望と陰謀が絡み合うサスペンススリラー

2013年韓国で公開された映画『怒りの倫理学』（原題：분노의 윤리학、英題：An Ethics Lesson）は、美人女子大生ジナの殺人事件を巡る、5人の人間模様を描いたサスペンススリラーです。監督はパク・ミョンラン、主演はイ・ジェフンをはじめとする実力派俳優陣が名を連ねています。

物語は、ジナがアパートで殺害される場面から始まります。事件の目撃者である警察官ジョンフンは、盗聴・盗撮をしていたために証言できずに苦悩します。一方、ジナと不倫関係にあった大学教授ステクは容疑者として取り調べを受けます。

ジョンフンとジナの元恋人ヒョンスは、それぞれが自身の保身や復讐心に駆られ、互いを陥れようとします。この混乱に乗じて、ジナに多額の金を貸していた消費者金融業者ミョンロクは、ジョンフンとヒョンスを巧みに操ろうとします。しかし、ステクの妻ソンファの登場によって、事態はさらに複雑さを増していきます。ソンファは冷徹な知略でミョンロクをも翻弄する、物語のキーパーソンとなるのです。

それぞれの登場人物は、自身の欲望や過去のトラウマ、そして事件の真相に翻弄されます。警察官は正義感と罪悪感の間で揺れ動き、元恋人は嫉妬と復讐心に囚われ、大学教授は不倫関係と社会的立場を守ることに必死です。金融業者は金銭欲に目がくらみ、そして教授の妻は、夫の秘密と自身のプライドを守ろうとします。

本作は、これらの登場人物たちが織りなす複雑な人間関係と、巧妙に張り巡らされた伏線が特徴です。一見するとバラバラに見える登場人物たちの行動が、徐々に絡み合い、最終的に衝撃的な真実へと導いていきます。

キャスト陣も、それぞれの役柄に完璧にハマり込んでいます。イ・ジェフン演じるジョンフンの葛藤、チョ・ジヌン演じるミョンロクの冷酷さ、キム・テフン演じるヒョンスの狂気、クァク・ドウォン演じるステクの弱さと狡猾さ、そしてムン・ソリ演じるソンファの知略と冷酷さなど、俳優陣の熱演が物語に深みを与えています。

さらに、本作のキャスティングは、一般的な方法とは異なり、俳優自身がシナリオを読んで演じたい役を自ら選択するという、ユニークな方式で行われたことも注目に値します。そのため、俳優たちがそれぞれのキャラクターに深く入り込み、よりリアルな演技が実現できたと言えるでしょう。

『怒りの倫理学』は、単なる殺人事件のミステリーにとどまらず、人間の欲望、倫理、正義といった普遍的なテーマを深く掘り下げた作品です。予測不能な展開と、観る者を最後まで引き込む緊張感、そして俳優たちの圧倒的な演技力によって、忘れられない衝撃を与えてくれるでしょう。

韓国では2013年2月21日に公開され、日本でも2014年に『怒りの倫理学』として公開、その後『悪魔の倫理学』としてDVDが発売されました。この機会に、ぜひ本作を鑑賞し、その魅力を体感してみてください。

スタッフ

監督・脚本：パク・ミョンラン
製作：チョン・ウォンチャン、キム・ヒョンソク
撮影：キム・ウヒョン
美術：チョ・ファソン
音楽：チョン・ジュンハン
編集：キム・ソンミン
製作会社：TPSカンパニー、SARAMエンターテイメント
配給：ロッテエンターテイメント

もう一度検索