思春の泉

映画『思春の泉』の詳細

『思春の泉』は、日本の青春喜劇映画で、1953年11月3日に公開されました。この映画は中川信夫が監督を務め、新東宝と俳優座の製作提携のもとで制作されました。白黒映画としてスタンダードサイズで撮影され、全10巻、合計で2,420メートルの長さを持ちます。本作は宇津井健の映画デビュー作でもあり、後に『草を刈る娘』というタイトルに改題されました。

原作と舞台

本作の原作は、石坂洋次郎の小説『草を刈る娘』です。物語は東北地方の農村が舞台となっており、特に岩手山麓の田頭村（現在の八幡平市）でロケが行われました。青春時代の恋愛や友情を描いた作品で、農村特有の文化や風俗を色濃く反映しています。

俳優座に所属していた宇津井健を映画デビューさせることを目的とした作品で、千田是也や岸輝子、東野英治郎といった俳優座のメンバーが数多く出演しています。公開当初は朝日新聞夕刊で高評価を受けるなど、観客からの支持を得られました。また、日本以外のソ連でも一般公開されたことからも、その評価の高さが伺えます。

中川信夫監督と作製の背景

中川信夫監督は、戦時中の映画製作本数減少の煽りを受けて一時期東宝を契約解除されていましたが、『思春の泉』の成功により、再び東宝撮影所に戻る機会を得ます。この経緯は director にとっても特別な意味があり、自身の自叙伝の中では、東宝の森岩雄撮影所長からの誘いを「グッときた」と表現し、感動的なエピソードとして語られています。

本作はのちにメインタイトルを原作に基づいた『草を刈る娘』に変更されました。具体的な時期や経緯は不明ですが、別の映画『草を刈る娘』（1961年）が公開された際、再上映されたことが確認されています。最近では国立近代美術館フィルムセンター所蔵版が放映された際も、タイトルが『草を刈る娘』となっていました。

あらすじ

物語の舞台は東北の農村で、秋の馬草刈りの時期にコミュニティが賑わいます。若者たちが集まり、恋愛が芽生えるこの季節、そで子婆さんとため子婆さんは毎年、若者たちの縁組を支援してきました。今年はモヨ子と時造という村の若者の結びつきを推進しようとします。水浴びするモヨ子を見た時造は彼女に胸をトキめかせ、占い師から良い予言を得ることもでき、縁談は順調に進むかに思えました。

しかし、時造に想いを寄せる村の芸者チョン丸が絡んできたり、時造がモヨ子に乱暴を働く事件が発生したりすることで、状況は徐々に悪化します。二人の関係の亀裂は、そで子婆さんとため子婆さんの諍いへと発展し、村全体を巻き込む大騒動となります。

スタッフとキャスト

本作の主要なスタッフは以下の通りです。

• - 監督：中川信夫
• - 製作：高木次郎、山崎喜暉、佐藤正之
• - 原作：石坂洋次郎
• - 脚色：館岡謙之助
• - 撮影：横山実
• - 美術：北川勇
• - 照明：関川次郎
• -音楽：斎藤一郎
• - 編集：長田信

キャストでは、モヨ子役を左幸子、時造役を宇津井健が演じています。さらに、岸輝子、高橋豊子、永井智雄、松本克平など多くの俳優がこの作品に参加して、当時の日本の映画界を象徴するキャストとなっています。

本作は、現代においても正式名称『思春の泉』として知られ、映画史にその名を刻んでいます。

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