性別役割分業

性別役割分業：歴史、現状、そして未来

性別役割分業とは、社会における男性と女性の役割を明確に区分する概念です。古くから、生物学的差異や社会構造、文化的な要因によって、男性と女性にはそれぞれ異なる役割が割り当てられてきました。しかし、時代や社会の変化に伴い、この概念は常に変遷を遂げ、現代においても重要な議論の的となっています。

世界における性別役割分業

歴史的に、女性は生命を生み育む役割を担い、家事や育児に携わるケースが多かった一方、男性は狩猟や農業、戦争といった役割を担うことが一般的でした。これは、身体的な差異や社会構造に起因するものです。古代社会においても、農業などでは男女が協力して仕事を行う場合が多くありましたが、地域や家庭によって役割分担は多様でした。戦争においては、男性が戦闘員として活躍し、女性は看護など限定的な役割を担うことが世界共通の傾向でした。

産業革命以降、工業化が進展すると、女性も賃金の安さから過酷な労働を強いられることが多くなりました。母性保護の観点から、女性の労働は規制される側面もありました。しかし、産業構造がサービス業中心へと変化し、体力をそれほど必要としない業種や感情労働が重視されるようになると、男女の垣根は低くなり、女性も幅広い業種で働くようになりました。一方、重労働から解放された男性の一部が家庭に携わる余裕を持つようになり、従来の性別役割分業の概念が見直される契機となりました。特に、北欧諸国では役割分担の概念が薄くなっていますが、徴兵制などにおいては男性への負担が大きいとして批判も存在します。

日本における性別役割分業

日本では、「男は仕事、女は家事・育児」という役割分担が長く一般的でした。自営業や農業などでは、家内労働が中心であり、この概念が必ずしも当てはまらないケースもありました。近年では、社会全体としての男性と女性の生き方、生計の立て方という文脈でも用いられるようになり、やや概念の混同も見られます。

中世の日本においては、「家」が確立した社会構造の中で、夫は家の対外的な活動を、妻は家の中の活動を分担するという役割分担がありました。武家や公家では、夫が収入を得て家計を支え、妻は家政を管理するという形が一般的でした。庶民においても、夫が対外的活動を行い収入を確保し、妻が家政を担うという分担が見られました。

戦後、家制度が廃止され、高度経済成長期には、「夫は仕事、妻は家事・育児」という核家族モデルが広く普及しました。企業の賃金体系も、妻子を養う男性を優遇する傾向がありました。しかし、1980年代以降、脱工業化、経済のソフト化、家事の機械化などが進み、女性の社会進出が容易になり、共働き世帯が増加しました。これにより、従来の性別役割分業システムが見直されるようになりました。

1990年代以降の経済の停滞や賃金の下落により、共働き世帯はさらに増加し、夫婦間の役割分担は変化しつつあります。少子化による労働力不足が懸念される中、政府は男女共同参画政策を進めていますが、女性の労働力化が進展する一方、男性の家事分担は十分とは言えず、「男は仕事と家事、女は仕事と家事・育児」という新たな役割分担も生まれています。また、「男は仕事と家事、女は家事と趣味（的仕事）」という、いわば「新・専業主婦志向」ともいえる分業志向も台頭しつつあります。

女性の社会進出と性別役割分業

女性の社会進出が進み、共働き世帯が増加した一方で、女性と男性の家事・育児時間には大きな格差があります。これは、男性の長時間労働が大きな要因です。特に、都市部では職住近接が難しく、長時間労働が顕著であることが、この格差を拡大させています。

今後の課題

性別役割分業は、社会の変化とともに常に変容してきました。現代社会においても、男女間の役割分担、ワークライフバランス、長時間労働問題などは、重要な社会課題として議論されています。今後、より柔軟で多様な働き方が実現し、男女が平等に社会参加できるような社会システムの構築が求められています。このためには、個々の意識改革とともに、企業や政府による制度改革、社会全体の意識改革が不可欠です。

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