性質二元論

性質二元論とは

性質二元論（せいしつにげんろん、英: Property Dualism）は、心身問題における形而上学的な立場の一つです。この考え方は、世界に存在する実体はただ一つであり、それが心的な性質と物理的な性質という二つの異なる性質を持っている、と捉えます。

実体二元論との違い

同じ二元論に分類される実体二元論は、物理的な実体とは別に、魂や霊魂といった心的実体の存在を仮定します。しかし、性質二元論は、実体の種類は一つであると考えます。

還元主義・創発主義との対立

性質二元論では、心的性質と物理的性質は互いに還元できない、あるいは一方から他方が創発することはない、と考えます。この点で、物理主義や観念論といった一元論とは立場を異にします。

現代哲学における重要性

現代の心の哲学の分野で議論される二元論は、実体二元論ではなく、基本的にこの性質二元論を指すことが多いです。二つの性質として、物理的なものと意識の主観的な側面（現象意識やクオリアなどと呼ばれる）が考えられます。性質二元論の代表的な例として、デイヴィッド・チャーマーズの唱える自然主義的二元論があります。

類似の概念

類似の言葉として、二相理論（double aspect theory）や中立一元論（neutral monism）があります。二相理論は「一つの基本的なものが心的側面と物理的側面を持つ」という考え方を指し、中立一元論は「心的でも物理的でもない中立的な実体で世界が構成されている」という考え方を指します。これらの言葉と性質二元論との意味の違いは明確ではなく、互換的に用いられることもあります。

対立する立場

性質二元論と対立する立場について解説します。

物理主義との対立

性質二元論は二元論であるため、物理的な一元論である物理主義と対立します。物理主義も複数の性質を認めますが、性質二元論とは還元または創発の点で異なります。物理主義は、心的なものは物理的なものに還元できる、または物理的なものから心的なものが創発できる、と考えます。一方、性質二元論はそうは考えません。心的な性質（特に意識の主観的側面に関わる性質）について、物理的なものへの還元または物理的なものからの創発が可能だとする物理主義の主張は、性質二元論の立場からは、「貪欲な還元主義」または「不合理な創発」として批判的に扱われます。

性質二元論は、心の哲学における重要な立場の一つであり、意識の性質や物理現象との関係について深く考察するための ভিত্তিを提供しています。

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