怪人:特撮における悪役像とその多様な姿
「怪人」という呼び名は、怪しい人物や、不思議な力を持つ人物を指す一般的な言葉として使われます。しかし、
特撮番組の世界においては、より具体的な意味合いを持ちます。ここでは、
特撮作品、特に
テレビ番組に登場する「特殊能力を持つ
悪役」としての怪人に焦点を当てて解説します。
怪人と怪獣:その違い
怪人と
怪獣は明確に区別されているわけではありません。しかし一般的には、人間的特徴(人型である、二足歩行をする、言語を理解するなど)を保持しているものを「怪人」、そうでないものを「
怪獣」と呼ぶ傾向があります。
ただし、この区別は必ずしも厳密ではなく、「獣」を含む種族名を持つ怪人(
スーパー戦隊シリーズなど)や、
怪獣とまとめて扱われる
宇宙人(ウルトラシリーズなど)も存在します。境界領域の存在と言えるでしょう。
怪人の歴史:変遷と進化
怪人のイメージは時代とともに変化を遂げてきました。初期の怪人は、紙芝居『
黄金バット』(
1930年)に登場する「ナゾー」のような、奇妙な姿をした
宇宙人でした。その後、
江戸川乱歩の『
怪人二十面相』(
1936年)では、変装の達人として、悪事を働く怪人が登場し、その名称は広く知られるようになりました。
1950~60年代の
テレビ番組では、『
月光仮面』(
1958年)の「ドクロ仮面」や「サタンの爪」のように、仮面をつけた人間が怪人として描かれることが多かったのです。彼らは犯罪組織の首領でありながら、仮面によって怪人のキャラクター性を際立たせていました。
しかし、
1971年の『
仮面ライダー』の登場によって、怪人の概念は大きく変わります。それまでの怪人が奇怪な仮面をつけた人間だったのに対し、『
仮面ライダー』では、怪人は「改造人間」という設定が導入されました。これは、ショッカーの改造人間というキャラクターを確立し、以降の
特撮番組において、ヒーローに敵対する組織の構成員として、多様な怪人が登場する礎となりました。
[英語圏]]では、悪役を「ヴィラン(Villain)」と呼び、特に
超能力や
科学技術を駆使する犯罪者を「
スーパーヴィラン]」と呼びます。これは主にアメリカンコミックに登場する架空の[[悪役を指す言葉ですが、
特撮番組の怪人も、その概念と重なる部分があります。
ダース・ベイダーやメガトロンなども、
スーパーヴィランの代表例として挙げられます。
興味深いのは、
スーパーヴィランの中には、
正義に目覚めたり、ヒーローと協力して善行を行うキャラクターもいることです。これは、怪人の単純な
悪役像を超えた、複雑なキャラクター造形を示しています。
代表的な怪人の類型
特撮番組に登場する怪人は、その起源や能力によって様々な類型に分類できます。代表的なものを挙げると以下の通りです。
改造人間/サイボーグ: 昭和ライダーシリーズの敵(一部を除く)などに多く見られます。そのデザインや能力は作品によって大きく異なります。
人造人間/ロボット: 『
人造人間キカイダー』シリーズのダークやシャドウ、『
ロボット刑事』のバドー犯罪シンジケートなどが代表例です。
地球外生命/宇宙人: 『ウルトラシリーズ』の宇宙人などが有名です。ただし、人間型でない種族も多く存在します。
妖怪: 『
超神ビビューン』や『
手裏剣戦隊ニンニンジャー』など、多くの作品に登場します。人間型でない形態も多く存在します。
人類の進化形態: 『仮面ライダー555』のオルフェノクのように、人間の進化や変異によって生まれた存在も怪人として描かれます。
邪念や欲から誕生したもの: 人間の負の感情から生まれた怪物として描かれる怪人も多く存在します。『
仮面ライダーオーズ/OOO』のヤミーや『
仮面ライダーウィザード』のファントムなどがその例です。
物体や他の生物への憑依・寄生: 『牙狼-GARO-』シリーズのホラーのように、何らかの物体や生物に憑依・寄生して存在する怪人もいます。
一般人が特殊な装置により変身: 『
仮面ライダーW』のドーパントや『
仮面ライダーフォーゼ』のゾディアーツなどは、人間が変身することで怪人となるタイプです。
異世界からの存在: 『仮面ライダー龍騎』のミラーモンスターなどは、異世界から来た存在として描かれています。
超古代文明の生き残り: 『
仮面ライダークウガ』のグロンギなどは、
超古代文明の生き残りとして描かれます。
その他の怪人像
上記の他にも、パロディとして作られた怪人や、スポーツ選手につけられた「怪人」という異名など、多様な怪人像が存在します。
まとめ
怪人は、時代や作品によってその姿や能力、そして存在意義も変化してきました。しかし、常にヒーローに立ち向かう存在として、
特撮作品において重要な役割を担ってきました。様々な怪人の類型を理解することは、
特撮作品をより深く理解する上で不可欠です。