怪人二十面相 (小説)

『怪人二十面相』

概要

『怪人二十面相』は、1936年に『少年倶楽部』に連載された江戸川乱歩の名作であり、少年向けの推理小説です。物語は大怪盗である怪人二十面相が、名探偵明智小五郎と対峙する様子を描いています。この作品は、彼の変装の技術と巧妙な犯罪が多くの読者を魅了し、江戸川乱歩の作品の中でも特に人気があります。暴力的な犯罪劇ではなく、知恵比べとサスペンスで構成されており、若い読者に向けた冒険心あふれる物語です。

あらすじ

物語は、実業界において著名な羽柴壮太郎の邸宅が舞台です。彼の家に、変装名人として名を馳せる怪人二十面相から、「ロマノフ王家に伝わる宝石を狙います」という内容の予告状が届きます。この情報が世間を騒がせ、特に羽柴家に与える圧力は計り知れません。また、羽柴壮太郎の長男である壮一が、南洋での成功をおさめて帰国するという報せが届きますが、その裏側で恐ろしい事件が待ち受けていました。

ロマノフ王家からの宝石が奪われ、その後次男の壮二が誘拐される事態が発生します。二十面相は壮二の解放と引き換えに、安阿弥作の観世音像を要求してきました。羽柴壮太郎は明智小五郎に協力を求めますが、彼が不在のため、助手である小林芳雄が代わりに事件に挑むことになります。

二十面相の狙い

怪人二十面相は、宝石を始めとしていくつかの非常に価値のある品々を狙っています。ロマノフの宝冠に付いている六つのダイヤモンド（「ロマノフのダイヤ」）や、鎌倉時代の観音像、さらには国立美術館にある貴重な美術品すべて（「美術城」）がその対象です。これらは全て、物語の中で大きな役割を果たします。

登場人物

• - 羽柴壮太郎: 実業家で、本作の発端となる予告状の対象者。
• - 羽柴壮一: 壮太郎の長男で、家出してボルネオに渡り成功した後、帰国します。
• - 羽柴壮二: 壮太郎の次男であり、後に少年探偵団を結成します。
• - 日下部左門: 絵画収集家であり、二十面相の次の標的になります。
• - 小林芳雄: 明智の助手。のちに「小林少年」として知られます。
• - 怪人二十面相: 謎の怪盗で、数々の変装によって知られています。
• - 明智小五郎: 名探偵として、二十面相の良き対戦相手です。
• - 中村善四郎: 警視庁捜査一課の係長として登場します。

その他の情報

本作では、小林少年が「鳩のピッポちゃん」と呼ばれる鳩を携行しており、そのキャラクターも物語の中で重要です。また、作品は多くの出版社から再版され続け、今も多くのファンに愛されています。江戸川乱歩という作家にとって、『怪人二十面相』は彼の推理小説の金字塔とも言える作品で、今後の日本の推理小説に多大な影響を及ぼしました。

書誌情報

本作は大日本雄弁会講談社から1938年に出版され、その後各種版が出版されています。特に1987年の江戸川乱歩推理文庫第31巻や、1988年の愛蔵版、さらには2013年の青い鳥文庫の新装版など、多岐にわたって再販されています。

このように『怪人二十面相』は単なる娯楽作品ではなく、後の探偵物語や少年探偵団の流れを形成する重要な作品となりました。

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