恋するカレン

「恋するカレン」は、1981年6月21日にリリースされた大滝詠一の8枚目のシングルです。この楽曲は、彼の代表作であるアルバム『A LONG VACATION』にも収録されていますが、シングル版ではイントロ部分の音量が2.5db上げられているという特徴があります。

B面には「雨のウェンズデイ」が収録されており、この曲は翌年にシングルとして再リリースされた際にもB面として収録されました。「雨のウェンズデイ」は、元々スラップスティックに提供した「海辺のジュリエット」という楽曲に、松本隆が新たな歌詞とサビのパートを追加したものです。

「恋するカレン」のレコーディングは、「君は天然色」と同様に一発録りで行われましたが、アコースティックギター、パーカッション、ピアノなどの楽器が幾重にも重ねて録音されています。大滝詠一自身は、ベースの演奏について「ウッドベースとDANELECTROベースを組み合わせて使用した」と語っており、良いオーディオシステムで聴くとその違いが分かるとのことです。また、ストリングスのアレンジは松任谷正隆が担当し、大滝詠一が細かく指示したフレーズを譜面に起こしたといいます。

特に印象的なサビの多重コーラスは、大滝詠一自身によるものです。このコーラスワークについて、大滝は「『ロンバケ』で唯一マルチをシンクロさせた」と語っており、その結果、コーラスに多くのトラックを使用することができたと述べています。ダビング作業中はスレーブマルチのみで作業し、完成後にコーラス部分だけをミキシングし、その2ミックスをマスターマルチに戻すという複雑な工程を経て制作されました。

アレンジについては、事前に詳細な譜面が書かれていたわけではなく、大滝詠一の頭の中にあるイメージを基に、現場で作り上げていったとのことです。

しかし、ボーカルの出来には納得がいかず、一時はお蔵入りも覚悟したそうです。その理由について、大滝は「オケやコーラスを分厚く作り込んだ結果、ボーカルが負けてしまった」と語っています。そのため、ボーカル録音後には「やめてしまおうかと思った」と当時の心境を明かしています。

プロモーション用のシングル盤は、ブルーレーベルでクリアヴィニール仕様となっており、音源はステレオ音源を機械的にモノラル化したものが使用されました。この処理は、以降のソニー盤のプロモーション用モノラル盤にも適用されました。

収録曲は、A面に「恋するカレン」、B面に「雨のウェンズデイ」が収録されており、両曲ともに作詞は松本隆、作曲は大滝詠一、編曲は多羅尾伴内が担当しています。

このシングルのプロデューサーは大滝詠一自身が務め、エンジニアは吉田保が担当。ジャケットイラストは永井博が手掛けています。

また、2007年にはトヨタ「アリオン」のCMソングとしても使用され、幅広い層に再認知されました。

この楽曲は、大滝詠一の緻密な音楽性と、松本隆の歌詞、そして豪華な演奏陣によって生まれた、まさに名曲と呼ぶにふさわしい作品です。そのクオリティの高さは、現在でも多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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