君は天然色

君は天然色

「君は天然色」は、1981年3月21日にリリースされた大滝詠一の7枚目のシングルです。この曲は、同日発売されたアルバム『A LONG VACATION』にも収録されていますが、シングル版ではイントロのチューニングとカウントがカットされています。シングルバージョンは、後に2014年のベストアルバム『Best Always』でCD化されました。

制作背景

この曲は、もともと大滝詠一が須藤薫に提供する予定だった楽曲でした。須藤のディレクターからの依頼で制作されたものの、男性向きではないという理由から不採用となり、その後、大滝自身が歌うことになりました。レコーディングは大人数で行われ、吉田保がエンジニアを担当しました。この時の経験は、「君は天然色」のレコーディングにおける予行演習のような役割を果たしました。大滝は、この曲を返してくれたディレクターに感謝しており、須藤も残念がっていたそうです。

間奏部分は、以前にクレイジー・パーティーの「がんばれば愛」のために制作されたものの、未使用だったものが採用されました。歌詞は松本隆が担当しましたが、当時は妹を亡くしたことでスランプ状態にあり、制作が遅れていました。大滝は、他の作詞家を探すよう勧める松本に対し、彼の詞でなければ意味がないと半年でも一年でも待つと伝えました。その結果、アルバムの発売は半年遅れることになりました。松本は、この曲の歌詞で「想い出はモノクローム」というフレーズを思いつきましたが、これは妹を失った悲しみの中で見た街の色からインスピレーションを得たものです。

バックトラックのレコーディングでは、当初サビを全音高く転調させる予定でしたが、歌録りの際に声域が合わず、サビだけキーを下げました。これにより、楽曲は独特の展開を持つことになりました。また、ピッチダウンによって失われた高音域は、パーカッションのベルをダビングすることで補完されました。

サウンドの特徴

大滝詠一自身が「日本版ウォール・オブ・サウンド」と評するこの曲は、分厚く、ポップなサウンドが特徴です。特にイントロの演奏を聴いた際、大滝は長年研究してきたフィル・スペクターサウンドが自分のものになったと感じ、大きな感動を覚えたと語っています。伊藤銀次や佐野元春も、このサウンドに驚いたそうです。

プロモーション用シングルには、ブルーとイエローの2種類のレーベルがあり、いずれもクリアビニール仕様です。

日本音楽著作権協会（JASRAC）の著作権使用料分配額ランキングでは、2013年度に国内作品で6位を記録しました。

収録曲

SIDE A
君は天然色 - (4:42) OT-5
作詞: 松本隆、作曲: 大瀧詠一、編曲: 多羅尾伴内

SIDE B
カナリア諸島にて - (3:58) OT-6
作詞: 松本隆、作曲: 大瀧詠一、編曲: 多羅尾伴内

ミュージックビデオ

発表から40周年にあたる2021年3月21日、大滝詠一の全177曲が音楽サブスクリプションサービスで解禁されました。それに先立ち、「君は天然色」のミュージックビデオが初めて制作され、3月3日にYouTubeで公開されました。ビデオは永井博のイラストを依田伸隆が構成・配置して制作したもので、依田は以前にもテレビアニメ『かくしごと』のエンディングアニメーションを担当しています。

カバーとタイアップ

「君は天然色」は多くのアーティストによってカバーされており、さまざまなCMやアニメのテーマ曲にも起用されています。主なタイアップとしては、ロート製薬「新・Vロート」のCMソング（1981年）、キリンビバレッジ「生茶」のCMソング（2004年）、スズキ「アルトエコ」のCMソング（2011年）、テレビアニメ『かくしごと』のエンディングテーマ（2020年）などが挙げられます。

発車メロディとしての使用

2020年10月1日から、大滝詠一の出身地である岩手県奥州市の水沢江刺駅で、この曲が発車メロディとして使用されています。これは、大滝のファンや鉄道ファンの有志が、地元ゆかりの曲を駅の発車メロディに採用する動きを参考に、導入を提唱したものです。1番線では冒頭からAメロ部分、2番線ではサビ部分のアレンジが使用されています。

その他

ポルノグラフィティの楽曲「NaNaNa ウィンターガール」は、「君は天然色」のオマージュソングであり、歌詞の中に「君は天然色」というフレーズが登場します。

まとめ

「君は天然色」は、大滝詠一の音楽キャリアの中でも特に重要な一曲であり、その独特のサウンドと感動的な歌詞は、多くの人々に愛され続けています。リリースから40年以上経った今でも、多くのメディアで使用され、新たなファンを獲得し続けている、まさに時代を超えた名曲と言えるでしょう。

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