恋のメキシカン・ロック

恋のメキシカン・ロック

「恋のメキシカン・ロック」は、1967年5月1日に橋幸夫によってリリースされたシングルで、彼の代表的なリズム歌謡の一つです。この楽曲は、同年公開の橋幸夫主演の映画『恋のメキシカンロック 恋と夢と冒険』の主題歌としても使用されました。

リリースと背景

1960年にデビューした橋幸夫は、股旅歌謡や青春歌謡を経て、1964年に『恋をするなら』でエレキサウンドを導入し、新たな音楽の方向性を開拓しました。その後、『ゼッケンNO.1スタートだ』、『チェッ・チェッ・チェッ（涙にさよならを）』、『あの娘と僕（スイム・スイム・スイム）』などのリズム歌謡で成功を収め、第7回日本レコード大賞企画賞を受賞。「恋のメキシカン・ロック」は、これらの流れを汲む、アメリアッチリズムを取り入れた楽曲です。

橋幸夫自身は、この曲の背景として、翌年のメキシコオリンピックでメキシコが注目されていたことを挙げています。パーカッションとブラスセクションの絶妙な絡みが、楽曲の魅力を引き出していると評価しました。

楽曲の特徴

「恋のメキシカン・ロック」は、ラテン音楽のリズムと歌謡曲のメロディが融合した、独特のサウンドが特徴です。異国情緒あふれる歌詞と、橋幸夫の伸びやかな歌声が、聴く人を魅了します。ジャケットには、「ニューステップ、メキシカンロックを踊ろう」と題して、日本タップダンス界の祖である中川三郎によるステップの解説が掲載されています。

リズム歌謡の終焉と新たな挑戦

「恋のメキシカン・ロック」は、橋幸夫のリズム歌謡の最終作となりました。吉田正は、グループ・サウンズの台頭を見て、リズム歌謡から離れることを決断したと言います。橋幸夫自身も、時代の変化を感じ、グループ・サウンズを取り入れた「思い出のカテリーナ」をリリースするなど、新たな音楽性に挑戦しました。

後世への影響

大滝詠一は、厚家羅漢名義で橋幸夫のリズム歌謡に特化したアルバム『SWIM! SWIM! SWIM!』をプロデュースし、「恋のメキシカン・ロック」を「まさにリズム歌謡の最後を飾るにふさわしい曲」と評価しました。この楽曲は、橋幸夫の代表作の一つとして、多くのアルバムに収録され、テレビ番組やステージでも頻繁に歌唱されています。清水アキラのモノマネによって、橋幸夫を知らない世代にも広く知られています。

2005年には、橋幸夫のデビュー45周年を記念して、茨城県潮来市の前川あやめ園に歌碑とジュークボックスが設置され、「恋のメキシカン・ロック」も聴けるようになりました。また、同年にはJR常磐線大甕駅の発車メロディとしても採用されています。

カバーと映画

「恋のメキシカン・ロック」は、三山ひろしやスカポンタスなど、多くのアーティストによってカバーされています。また、楽曲発表から3ヶ月後には、同名の映画が公開され、橋幸夫と由美かおるが主演を務めました。映画は、グアム島を舞台に、スポーツ万能な主人公と混血娘の恋と冒険を描いた物語です。

「恋のメキシカン・ロック」は、橋幸夫の音楽キャリアにおいて重要な位置を占める楽曲であり、時代を超えて愛され続けています。

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