恋人よ (五輪真弓の曲)

「恋人よ」(こいびとよ)

「恋人よ」は、1980年8月21日にCBSソニーからリリースされた五輪真弓の通算18枚目のシングルです。この曲は、五輪がかつてのプロデューサー、木田高介の葬儀に出席した際に彼の妻が泣き崩れる姿を目の当たりにしたことからインスパイアを受けて作られました。歌詞には別れの悲しみが織り込まれており、葬儀後の帰り道に思いついたとされています。

当初、この曲のタイトルは「枯葉」というものでしたが、後に改名されました。また、もともとB面に予定されていた「ジョーカー」がA面に変更されることになったのも、この曲の受けが良かったからです。「恋人よ」は1980年代に韓国で多く歌われ、アジアの様々な国でも広く知られる曲に成長しました。特にベトナムでは、日本のポップスがあまり知られていない中で、この曲が圧倒的なヒットを記録しました。

制作過程

このシングルの制作にあたって、CBSソニーのディレクターである中曽根皓二は、B面のアレンジを船山基紀に任せました。船山は、繊細で大規模なバラードのテイストを強調するため、48秒にも及ぶイントロを設けました。A面に変更された後、テレビ用にイントロを若干短縮し、バイオリンのメロディをサックスに変更する工夫も行いました。五輪は、自作の歌をアレンジャーに編曲してもらった後、スタジオで初めてそのサウンドを聴きました。その経験を振り返り、映画音楽のような豊かなストリングスの音色に感動し、魂を揺さぶられるような感覚を覚えたと語っています。

レコーディング時の仮歌のクオリティも非常に高く、それがそのままリリースされたことも、この曲の成功に繋がった要因の一つです。

業績と評価

「恋人よ」は、五輪真弓のシングルとして唯一オリコンチャートで週間1位を獲得しました。さらに、100位内には35週間にもわたってランクインし、累計売上はミリオンセラーを達成しました。1980年11月6日、TBSの音楽番組『ザ・ベストテン』に出演し、12月18日にはとうとう首位を獲得。その後も3週連続で1位に輝き、合計13週間にわたってランキング入りを果たしました。

この曲の影響力は大きく、1980年の『第31回NHK紅白歌合戦』に初出場する契機ともなりました。作品は第22回日本レコード大賞で金賞を受賞しましたが、大賞には輝きませんでした。

カバーと遺産

「恋人よ」は、数多くのアーティストにカバーされています。日本国内では、淡谷のり子や美空ひばり、中澤裕子などがアルバムに収録し、さまざまな世代に受け継がれています。

また、日本国外でも高い人気を誇り、ベトナムの女性歌手ミー・タムがアルバム『The Color of My Life』に収録し、香港のアラン・タムや韓国の鄰愛（Linae）などがそれぞれのアレンジでカバーしています。特にベトナムでは、日本の歌としても非常に有名で、現地のガイドや音楽家たちからも言及されています。

「恋人よ」は、時代を超えて多くの人に愛され続けている楽曲であり、その普遍的なテーマの深さが、今日まで支持されている理由と言えるでしょう。

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