恋愛日記

映画『恋愛日記』解説

『恋愛日記』（1977年公開）は、フランスの名匠フランソワ・トリュフォーが監督を務めた作品です。一風変わった設定で、女性の脚に特別な魅力を感じる中年男の生き様を描いています。

あらすじ

物語は、南仏モンペリエの墓地から始まります。そこには、脚の美しい女性たちだけが集まった、ある男の葬儀が執り行われていました。その男の名はベルトラン。生前の彼は、流体力学研究所に勤める研究員でありながら、美しい脚の女性に声をかけずにはいられない、どうしようもない女好きだったのです。

決してハンサムとは言えないベルトランは、あの手この手で女性と知り合い、関係を深めていきます。しかし、ある時、彼は自分が若くないことに気づき、過去の女性たちとの思い出を小説に残そうと決意します。

執筆は難航し、雇ったタイピストが辞めてしまうほどでしたが、最終的に彼は小説を完成させます。パリの出版社に持ち込むも、なかなか採用されませんでしたが、一人の女性編集者・ビジェーが彼の才能を見抜き、出版にこぎつけます。出版を通して二人は親密になります。

ある日、ベルトランはかつて愛した女性ヴェラと再会し、自分の本が彼女のために書かれたものだと気づきます。しかし、献辞を添えることはできませんでした。

クリスマスイブの夜、孤独に苛まれたベルトランは、過去に関係を持った女性たちに電話をかけますが、誰にも繋がりません。街に飛び出した彼は、美しい脚の女性に気を取られ、車に轢かれてしまいます。病院に運ばれましたが、最期もまた、美しい脚の看護婦に惹かれた結果、事故死してしまうのです。

クリスマスに行われた彼の葬儀には、彼に愛された女性たちが集まり、その人生は一冊の本となりました。

キャスト

ベルトラン・モラーヌ：シャルル・デネル
ジュヌヴィエーヴ・ビジェー：ブリジット・フォッセー

作品の魅力

トリュフォー自身もカメオ出演している本作は、脚フェティシズムをテーマにしながらも、普遍的な愛と孤独を描いています。主人公ベルトランの行動は時に滑稽ですが、その裏には、満たされない愛情への渇望が見え隠れします。

アンリ＝ピエール・ロシェがベルトランのモデルとなっており、恋愛経験を元に小説を執筆した背景が反映されています。また、トリュフォー作品には猫が登場するシーンが度々見られます。

関連作品

本作は1983年にアメリカでリメイクされています。『グッバイ、デイビッド』というタイトルで、日本では劇場未公開となりました。

『恋愛日記』は、一人の男の人生を通して、愛の多様性と人間の複雑さを描いた、トリュフォーの代表作の一つと言えるでしょう。

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