恐怖の振子

恐怖の振子

『恐怖の振子』（きょうふのふりこ、原題：The Pit and the Pendulum）は、1961年にアメリカ合衆国で製作・公開されたホラー映画です。ロジャー・コーマンが監督を務め、ゴシックホラーの旗手として知られるヴィンセント・プライスが主演を務めました。

本作の脚本はリチャード・マシスンが担当し、エドガー・アラン・ポーの短編小説『落とし穴と振り子』と『早すぎた埋葬』から着想を得ています。ポー文学が持つ独特な雰囲気と恐怖を映像化しようとする試みの一つとして制作されました。物語は16世紀のスペインを舞台とし、あるイギリス人青年が、彼の姉が謎めいた死を遂げた古城を訪れることから幕を開けます。姉の死の真相を探る彼の前に立ちはだかるのは、城に秘められた暗い歴史と、狂気、そして想像を絶する恐怖でした。

この映画は、アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ（AIP）が手掛けた、エドガー・アラン・ポー作品の映画化シリーズにおける重要な一本です。前年に公開され成功を収めた『アッシャー家の惨劇』に続く第二弾として製作され、本作もまた批評家から高い評価を得るとともに、興行的な面でも大きな成功を収めました。この成功によって、AIPはロジャー・コーマン監督、ヴィンセント・プライス主演によるポー作品の映画化シリーズを継続していくことになります。

監督のロジャー・コーマンは、低予算ながらも創意工夫に富んだ演出で知られており、本作でも限られた予算の中で効果的なセットデザイン、鮮やかな色彩、そして独特のカメラワークを駆使し、退廃的で美しいゴシックホラーの世界観を創り出しています。閉鎖的な空間である古城が舞台となることで、息詰まるような緊迫感と心理的な圧迫感が増幅されています。

主演のヴィンセント・プライスは、この種のホラー映画における彼の地位を確立する演技を見せています。狂気と悲しみ、そして秘密を抱える城の主人という難役を見事に演じきり、作品全体の雰囲気を牽引しています。彼の存在感は、作品のゴシックロマン的な要素と恐怖描写の両面において、欠かせないものでした。共演には、後にイタリアンホラーでも活躍するバーバラ・スティール、物語の案内役となるジョン・カー、そしてルアナ・アンダースらが名を連ねています。

タイトルにも冠されている「落とし穴と振り子」は、異端審問時代の恐ろしい拷問具を象徴しており、これが物語のクライマックスで視覚的な恐怖として描かれます。また、「早すぎた埋葬」のテーマは、登場人物たちの精神的な状態や過去の出来事と深く関わっており、心理的な恐怖を煽ります。

『恐怖の振子』は、単なる見世物的なホラーに留まらず、人間の狂気、過去の呪縛、そして閉鎖空間がもたらす絶望感を描き出した作品として評価されています。ロジャー・コーマンのポーシリーズの中でも代表的な一本であり、ゴシックホラー映画の歴史において重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

主なキャスト

ニコラス: ヴィンセント・プライス
フランシス・バーナード: ジョン・カー
エリザベス: バーバラ・スティール
カトリーヌ: ルアナ・アンダース
* レオン医師: アントニー・カーボーン

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