恐怖の蠍団

恐怖の蠍団（Lonesome Crow）

『恐怖の蠍団（ロンサム・クロウ）』は、ドイツを代表するハードロックバンド、スコーピオンズが1972年に発表した、彼らにとって記念すべき最初のスタジオアルバムです。まだバンドのサウンドが確立される以前の、初期衝動と探求心に満ちた作品として知られています。

当時のバンドの核を成していたのは、ボーカルのクラウス・マイネ、ギターのルドルフ・シェンカー、そしてその弟で天才ギタリストとして名を馳せることになるマイケル・シェンカーです。これにベースのロター・ハインベルク、ドラムスのウォルフガング・ズィオニーを加えた5人体制で本作は制作されました。

特筆すべき点は、この『恐怖の蠍団』が、ギタリストのマイケル・シェンカーがスコーピオンズの正式な一員としてレコーディングに参加した唯一のスタジオアルバムであるということです。彼の才能は当時から際立っており、本作でのプレイは後の輝かしいキャリアを予感させるものです。なお、後に発表されたアルバム『ラヴドライヴ』（1979年）における彼の参加は、ゲストとしての位置づけとなっています。このデビュー作は、後に世界的な成功を収めるバンドの礎でありながら、彼らのサウンドがまだ発展途上にあった時期を捉えた貴重な記録と言えます。初期の彼らの音楽性は、後のアリーナロック的なスタイルとは異なり、よりダークでサイケデリックな要素を含んだヘヴィロックの様相を呈しています。

収録曲は、すべてバンド名義でクレジットされています。本作には、若々しいエネルギーと実験的な試みが凝縮された楽曲が収められています。特にアルバムタイトルを冠した長尺のインストゥルメンタル曲「ロンサム・クロウ」は、この時期の彼らの音楽性を象徴するかのようです。

以下に、本作に収録されている楽曲リストを記します。

狂熱の蠍団 (I'm Goin' Mad) - 4:53
イット・オール・ディペンス (It All Depends) - 3:30
リーヴ・ミー (Leave Me) - 5:06
安息を求めて (In Search Of The Peace Of Mind) - 4:59
悪魔の血が騒ぐ時 (Inheritance) - 4:41
恐怖の毒蠍 (Action) - 3:56
* ロンサム・クロウ (Lonesome Crow) - 13:31

このアルバムは、スコーピオンズの輝かしい軌跡の第一歩であり、特にマイケル・シェンカーの初期の活動を知る上で非常に重要な作品です。その後の洗練されたサウンドとは一味違う、生々しいエネルギーと才能の片鱗が詰まった一枚として、今なお多くのロックファンに聴き継がれています。

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