マイケル・シェンカー

マイケル・シェンカー：ギターの神、波乱万丈の軌跡

マイケル・シェンカー（Michael Schenker、1955年1月10日 - ）は、ドイツ出身のハードロックギタリストです。白と黒に塗り分けられたギブソンのフライングVギターをトレードマークとし、卓越したギタープレイで世界中のファンを魅了し続けています。日本では、アルバムの邦題から「神」とも称されています。

実兄はスコーピオンズのリーダーであるルドルフ・シェンカー、実妹はヴィーヴァのキーボーディストであるバーバラ・シェンカーという音楽一家に生まれました。

生い立ちとキャリア初期

兄ルドルフの影響で幼少期からギターを始め、11歳でアマチュアバンド「コペルニクス」で初ステージを踏みます。17歳でスコーピオンズのデビューアルバム『恐怖の蠍団』にリードギタリストとして参加し、その才能を早くから開花させました。

UFOへの加入と成功

1973年、マイケルはUFOに加入。これは、前年にスコーピオンズがUFOのドイツツアーの前座を務めた際、UFOのギタリスト、ラリー・ウォリスが失踪したことがきっかけでした。UFOには1978年まで在籍し、6枚のアルバムに参加。バンドの世界的な成功に大きく貢献しました。しかし、メンバーとのコミュニケーションやアルコール問題に悩まされていた時期でもありました。

マイケル・シェンカー・グループ（MSG）の結成

UFO脱退後、短期間スコーピオンズに復帰したのち、1979年に自身のバンド「マイケル・シェンカー・グループ（MSG）」を結成。デビューから1984年までに4枚のスタジオアルバムと2枚のライブアルバムを発表し、ロックギターの名手として一時代を築きました。日本武道館でのコンサートも行われ、その人気を不動のものとしました。

マッコーリー・シェンカー・グループとUFO再結成

1986年からは、ボーカルのロビン・マッコーリーを迎え、「マッコーリー・シェンカー・グループ」名義で活動。3枚のスタジオアルバムをリリースしました。1991年には、ラットのサポートメンバーも務めています。1993年にはUFOの再結成に参加しますが、1998年の日本公演中に演奏を放棄し無断帰国。その後、2000年に復帰するも、2003年に再び脱退するなど、UFOとは複雑な関係が続きました。

ソロ活動と近年

1996年にMSGを再始動させて以降は、自身のソロプロジェクトも並行して行っています。2006年には、息子でギタリストのタイソン・シェンカーと共演。2011年にはソロアルバム「テンプル・オブ・ロック」を発表し、同名義のバンドで精力的にワールドツアーを行っています。2016年にはMSGの歴代メンバーが集結した「マイケル・シェンカー・フェスト」を始動させ、日本公演も行いました。

音楽性

マイケル・シェンカーの奏法は、ペンタトニックスケールを基本としたオーソドックスなロック奏法です。彼の使用するフライングVギターにはトレモロユニットが搭載されていませんが、ネックベンディングによってアーミングのような効果を生み出します。

特にネックベンディングの際は、ヘッド裏を左手で強く押して音程を下げるため、ギターのネックが折れてしまうこともあり、リペアマンを困らせていたというエピソードもあります。

使用機材

ギター

長年愛用していた白黒のギブソン・フライングVは、彼の代名詞とも言える存在でした。現在はディーン製のシグネチャーモデルを使用しています。過去には、アリア・プロⅡやパフォーマンスギター製のVシェイプギターも使用していました。

白黒のカラーリングは、白と黒のVギターを交互に演奏していた際に「一本にまとめてしまおう」と思いついたのがきっかけです。

アンプ

MSG初期まではマーシャルの1987を愛用していましたが、80年代後半からは一貫してJCM800 2205を使用しています。1990年頃には、マーシャルのJCM900のプロトタイプを発売前に貸与され、アルバム「M.S.G.」を制作。JCM900のプロモーションに大きく貢献しました。

エフェクター

ジムダンロップ製のワウペダル、BOSS製のボリュームペダル、ディレイ、コーラス、チューナーなどを使用。センド/リターンは使用せず、全て直列で接続しています。ディレイとコーラスを2個ずつ使用するのは、効果を調整するためです。

その他

弦は長年D'ANGELICOのEXTRA LIGHTを使用していましたが、近年はダダリオ製を使用。ピックはJIM DUNLOPのNYLON STANDARDを使用しています。2024年からは、再びギブソン・フライングVを使用しています。

逸話

マイケル・シェンカーは、その破天荒な行動やエピソードでも知られています。

1992年のMSG来日公演が、本人に知らされないままマネジメントによって契約されたため、激怒して来日を中止した。
ライブ中にギターを投げ捨てて演奏を放棄することがあり、日本でも過去に2度、演奏放棄事件を起こしている。
1992年のアルバム「M.S.G.」制作後、社会問題に対するアクションとしてハンガーストライキを敢行したが、誰の賛同も得られず、10日ほどで中止した。
初めてギターを作ったのは14歳の時で、学校の課題で三角形のギターを作った。
スコーピオンズ時代、ギターソロ直前に弦が切れた際、兄ルドルフのフライングVを借りて演奏を続行したのが、フライングVとの最初の出会い。
UFO脱退後、機材を引き取りに行った際、UFO側に所有権を主張され、返却されなかった。
最初に手に入れたフライングVは、UFO加入後に購入したもので、後に白黒ツートンにリフィニッシュした。
2003年に離婚に端を発する詐欺事件に巻き込まれ、生活費のためにギブソン製のフライングVを全て売却した。
ディーンギターズとのエンドース契約を結ぶまで、どこのメーカーとも契約したことがなかった。
ディーンギターズのシグネチャーモデルは、プロトタイプ1号機でマイケルがOKを出した。
ピックアップの仕様決定には、細かな調整を求め、ディーンギターズの担当者を驚かせた。
2024年、約20年ぶりにギブソン製のフライングVを再び使用している。
マッコリー・シェンカー・グループ時代、ピックアップの載せ替えを依頼した際、ウォーレン・デ・マルティーニの紹介でパフォーマンスギターと出会った。
現在所有しているギターの中で一番古いものは、2004年にディーンギターズで制作されたシグネチャーモデルのプロトタイプ1号機。
ワウペダルはJEN製のクライベイビーが有名だが、実は盗難の代用品として使い始めたもの。
ケーブルは、柔らかくL字型であれば特に拘りはない。
ステージ上のエフェクターは、ガムテープで乱雑に固定していた。
ギターに付着したテープの痕や汚れは、ギターとの歴史であるとしてそのままにしている。
古い弦を好み、新品の弦の音と感触が嫌い。
ライブステージでは、マーシャルの3段積みスタックアンプを並べているが、実際に音が出ているのは1台だけ。
欧米人としては大柄ではないが、手が大きく、中指を多用してギターを演奏する。
ライブ前にスニッカーズを食べる習慣がある。
ライブ終了後は、なるべく早く会場を後にする。
「ハウラー」と呼ばれる、小さな金属片を弦に擦り付け効果音を出す奏法を思いつき、その金属片を「宇宙のエナジーを取り込む道具」とジョークで語ったことが広まってしまった。

ディスコグラフィー

（ソロアルバム、スコーピオンズ、UFO、MSG/マッコーリー・シェンカー・グループ、マイケル・シェンカー・フェスト、マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロック、その他のプロジェクト）

ソロアルバム
『サンキュー』 - Thank You （1993年）
『ストーリー・オブ・マイケル・シェンカー「神」-その伝説-』 - The Story Of Michael Schenker （1994年） ※コンピレーション
『サンキュー2』 - Thank You 2 （1998年）
Thank You With Orchestra （1999年）
『アドヴェンチャーズ・オブ・ザ・イマジネーション』 - Adventures of the Imagination （2000年）
The Odd Trio （2000年）
Thank You 3 （2001年）
『ドリームス・アンド・エクスプレションズ』 - MS 2000: Dreams And Expressions （2001年）
Forever And More: The Best Of Michael Schenker （2003年） ※コンピレーション
Thank You 4 （2003年）
Doctor, Doctor: The Kulick Sessions （2008年） ※コンピレーション
Greatest Riffs （2009年） ※コンピレーション
スコーピオンズ
『恐怖の蠍団』 - Lonesome Crow （1972年）
『ラヴドライヴ』 - Lovedrive （1979年） ※3曲のみ参加
UFO
『現象』 - Phenomenon （1974年）
『フォース・イット』 - Force It （1975年）
『ノー・ヘヴィ・ペッティング』 - No Heavy Petting （1976年）
『新たなる殺意』 - Lights Out （1977年）
『宇宙征服』 - Obsession （1978年）
『UFOライブ』 Strangers in the Night （1979年） ※ライブ
The Best Of （1992年） ※コンピレーション
『ウォーク・オン・ウォーター』 - Walk on Water （1995年）
『聖約』 - Covenant （2000年）
『シャークス』 - Sharks （2002年）
マイケル・シェンカー・グループ / マッコリー・シェンカー・グループ
『神 (帰ってきたフライング・アロウ)』 - The Michael Schenker Group （1980年）
『神話』 - MSG （1981年）
『飛翔伝説 MSG武道館ライヴ』 - One Night at Budokan （1981年） ※ライブ
『黙示録』 - Assault Attack （1982年）
『限りなき戦い』 - Built To Destroy （1983年）
『ロック・ウィル・ネヴァー・ダイ』 - Rock Will Never Die （1984年） ※ライブ
『パーフェクト・タイミング』 - Perfect Timing （1987年） ※マッコリー・シェンカー・グループ
『セイヴ・ユアセルフ』 - Save Yourself （1989年） ※マッコリー・シェンカー・グループ
『マイケル・シェンカー・グループ』 - M.S.G. （1991年） ※マッコリー・シェンカー・グループ
『アコースティックM.S.G.！』 - Nightmare : The Acoustic M.S.G. （1991年） ※マッコリー・シェンカー・グループ
The Essential Michael Schenker Group （1991年） ※コンピレーション
『神々の饗宴〜M.S.G.ライヴ!!〜』 - M.S.G. Unplugged （1992年） ※マッコリー・シェンカー・グループ。ライブ
『リトゥン・イン・ザ・サンド』 - Written in the Sand （1996年）
『ストーリー・ライブ』 - The Michael Schenker Story Live （1997年） ※ライブ
『ジ・アンフォーギヴン』 - The Unforgiven （1999年）
『ライヴ〜ジ・アンフォーギヴン・ワールド・ツアー』 - The Unforgiven World Tour （2000年） ※ライブ
『ビー・アウェア・オブ・スコーピオンズ』 - Be Aware of Scorpions （2002年）
『アラクノフォビアク』 - Arachnophobiac （2003年）
『ヘヴィー・ヒッターズ』 - Heavy Hitters （2005年）
『テイルズ・オヴ・ロックンロール〜25thアニヴァーサリー・アルバム』 - Tales of Rock'n'Roll （2006年）
『イン・ザ・ミッドスト・オブ・ビューティー』 - In the Midst of Beauty （2008年）
『MSG 30周年記念コンサート - ライヴ・イン・トウキョウ』 - The 30th Anniversary Concert: Live in Tokyo （2010年） ※ライブ
『バイ・インヴィテーション・オンリー』 - By Invitation Only （2011年）
マイケル・シェンカー・フェスト
『ライヴ 2016 東京国際フォーラム・ホールA』 - Michael Schenker Fest Live: Tokyo International Forum Hall A （2017年） ※ライブ
『レザレクション』 - Resurrection （2018年）
『レヴェレイション』 - Revelation （2019年）
マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロック
『テンプル・オブ・ロック』 - Temple Of Rock （2011年）
『テンプル・オブ・ロック - ライヴ・イン・ヨーロッパ』 - Temple of Rock - Live in Europe （2012年）
『ブリッジ・ザ・ギャップ』 - Bridge The Gap （2013年）
『スピリット・オン・ア・ミッション』 - Spirit On A Mission （2015年）
その他のプロジェクト
『コントラバンド』 - Contraband （1991年）
The Plot （2003年）
『アンダー・コンストラクション』 - Under Construction （2003年） ※シューガー/シェンカー名義
『ジ・エンドレス・ジャム』 - Schenker-Pattison Summit - The Endless Jam （2004年） ※シェンカー-パティソン・サミット名義
Siggi Schwarz & The Electricguitar Legends （2004年）
Schenker-Pattison Summit - The Endless Jam Continues （2005年） ※シェンカー-パティソン・サミット名義
Siggi Schwarz & The Rock Legends （2005年）
Siggi Schwarz and Michael Schenker - Live Together （2006年）
『ジプシー・レディー』 - Acoustic Project - Gipsy Lady （2009年） ※マイケル・シェンカー&ゲイリー・バーデン名義

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