悪意ビット

悪意ビット（evil bit）は、RFC 3514で提案されたIPv4のジョークヘッダフィールドです。これは、スティーブ・ビラヴィンによって作成され、2003年のエイプリルフールに公開されました。このRFCでは、IPv4ヘッダの未使用ビットである「予約ビット」を利用し、パケットが悪意を持って送信されたかどうかを示すことを提案しています。これにより、悪意ビットが設定されたパケットを無視することで、コンピュータセキュリティの問題に対処することが容易になるとされました。

悪意ビットの影響

現実の社会問題では、しばしば悪意のある攻撃者がネットワークに侵入することを想定する必要があります。悪意ビットは、このような複雑な問題に対して、単純な技術的解決策を適用しようとする試みの象徴とされています。特に、インターネット検閲のような問題に対して、技術的なアプローチで解決しようとする試みの代表例として挙げられます。

ジョークRFCとして発表されたにもかかわらず、FreeBSDは公開当日に悪意ビットのサポートを実装しました。しかし、翌日にはこの実装は削除されました。翌年には、Linuxカーネルにiptablesモジュール「ipt_evil」が実装され、悪意ビットの機能が追加されました。さらに、FreeBSD 7では、悪意ビットを実装するパッチが利用可能であり、現在も更新が続けられています。これは、ジョークとして提案された技術が、実際のシステムに影響を与える可能性を示しています。

XMPPプロトコルの拡張仕様には、このRFCをオマージュした「XEP-0076: Malicious Stanzas」が存在します。この仕様は、悪意のあるスタンザ（XMLデータ）を識別するためのもので、悪意ビットの概念をプロトコルレベルで応用したものです。

また、このRFCは、ジョークではないRFC 3675「.sex Considered Dangerous」でも引用されています。この引用は、トップレベルドメイン.xxxの申請に対してIETFがコメントしようとしているのではないかと、同ドメインの支持者の間で疑念を生みましたが、実際にはこの文書は彼らの申請とは関係がありませんでした。この出来事は、技術的なジョークが、時に誤解を生む可能性を示しています。

さらに、2010年のエイプリルフールには、GoogleがAjax APIを介したリクエストに`&evil=true`というパラメータを追加しました。これは、悪意ビットの概念をAPIレベルでジョークとして活用した例であり、技術的なジョークの広がりを示しています。

関連項目

悪意ビットに関連する技術やジョークとしては、以下のようなものが挙げられます。

DO NOT TRACK要求（英語: Do Not Track）: ウェブサイトのトラッキングを制限するための仕組み。
HTTP 451: 政府による検閲などで、ウェブページが利用不可になったことを示すHTTPステータスコード。
鳥類キャリアによるIP ( RFC 1149 ): ハトを使ってIPパケットを伝送するジョークRFC。
Hyper Text Coffee Pot Control Protocol ( RFC 2324 ): コーヒーポットを制御するジョークRFC。
Hyper Text Coffee Pot Control Protocol for Tea Efflux Appliances ( RFC 7168 ): 紅茶の抽出を制御するジョークRFC。
洗濯ばさみ-DHCPによるIPアドレス管理 ( RFC 2322 ): 洗濯ばさみを使ってIPアドレスを管理するジョークRFC。
* 西暦10000年問題 ( RFC 2550 ): 西暦10000年以降の日付表記に関するジョークRFC。

これらの関連項目からもわかるように、悪意ビットは、技術的なジョークやパロディとして、様々な形で広がっています。

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