悪魔の性・全裸美女惨殺の謎

概要

イタリア映画独自のサスペンス・ホラー・ミステリーを融合させたジャンル、ジャッロ。その中でも1970年代初頭の作品として位置づけられるのが、1972年に公開された『悪魔の性・全裸美女惨殺の謎』です。原題はイタリア語で「七枚の黄色い絹のショール」（Sette scialli di seta gialla）を意味し、しばしばジャッロ作品のタイトルに見られるような、詩的でありながらもどこか不穏な雰囲気を帯びています。この作品でメガホンを取ったのは、監督のセルジオ・パストーレです。脚本はサンドロ・コンティエンツァとジョヴァンニ・シモネッリの共同執筆により、サスペンスフルな物語が構築されました。主演はアンソニー・ステファンが務め、その脇をシルヴァ・コシナ、ジャネット・レン、レナート・デ・カルミネ、ジャコモ・ロッシ・スチュアート、そしてウンベルト・ラオといった実力派俳優たちが固めています。本作は、同じ時期のイタリアン・スリラーにおける傑作として名高いダリオ・アルジェント監督の『歓びの毒牙』（1970年）からの影響が指摘されることもあり、当時のジャッロ映画の潮流の中で、どのような位置にあるのかを示す一つの要素として語られることもあります。鮮やかな色彩、スタイリッシュな演出、そして謎解きの要素が絡み合うジャッロ映画の魅力が詰まった一本と言えるでしょう。

あらすじ

物語の導入部では、視覚に障害を持ちながらも、優れた聴覚と才能を持つピアニストが主人公として登場します。彼の日常は、音によって構成されており、周囲の世界を耳で感じ取っています。ある夜、彼が偶然立ち寄った賑やかな酒場での出来事が、後の恐ろしい連続殺人事件へと彼を引き込む発端となります。店内で交わされていた、他の客たちの会話。それは、どう聞いても綿密に計画されているらしい殺人に関するものでした。断片的ではあるものの、その不穏で冷たい響きを帯びた会話は、主人公の心に深い不安と疑惑を植え付けました。彼はその時、自らがやがてこの恐ろしい計画の現実と対峙することになるとは知る由もありませんでした。

そして、主人公が耳にした恐ろしい会話の内容は、やがて現実のものとなってしまいます。予告されたかのように、実際に凄惨な殺人事件が発生したのです。しかも、それは単発の事件ではなく、不可解な凶行の始まりを告げるものでした。次々と犠牲者が出る中で、偶然とはいえ事件の核心に触れる可能性のある情報を得てしまった主人公は、警察による捜査が進められる一方で、自らの特殊な状況を活かし、独自の視点から事件の真相を追い始めることを決意します。盲目である彼にとっての情報源は、主に耳から入る音や会話、そして限られた接触から得られる感覚だけです。犯人の正体は誰なのか、彼（あるいは彼女）の目的は何なのか。そして、なぜ盲目の主人公が事件に関わることになったのか。主人公は、視覚に頼れないというハンディキャップを抱えながらも、持ち前の鋭い感覚と知性を頼りに、見えない世界の探偵として連続殺人の闇に立ち向かいます。サスペンスフルな展開と、盲目という設定が物語に独特の緊張感を与え、観客は主人公と共に事件の真相を予測しようと引き込まれます。ジャッロ映画らしい衝撃的な描写や、意外な犯人像への期待感が高まる、謎解きと恐怖が融合した作品です。

キャスト

本作に出演した主な俳優陣は以下の通りです。

アンソニー・ステファン
シルヴァ・コシナ
ジャネット・レン
レナート・デ・カルミネ
ジャコモ・ロッシ・スチュアート
ウンベルト・ラオ

これらの俳優たちが、物語の緊張感を高める上で重要な役割を果たし、作品の世界観を構築しています。

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