悲しみは雪のように

浜田省吾「悲しみは雪のように」：普遍的な感動を呼ぶバラードの軌跡

1981年、浜田省吾のアルバム『愛の世代の前に』に収録された楽曲「悲しみは雪のように」。その後、シングルカットされ、1992年にはフジテレビ系ドラマ『愛という名のもとに』の主題歌として新たな命を吹き込まれることになります。この曲は、オリジナルバージョンとドラマ主題歌バージョンという、大きく異なる2つのバージョンが存在することで知られています。

オリジナルバージョンの誕生：母への愛と詩へのオマージュ

オリジナルバージョンは、浜田省吾自身の母親が脳梗塞で倒れた際の深い悲しみと、それでも持ち続けた人への優しさを描いた、感動的な作品です。母親の重篤な状態と、そこから生まれた複雑な感情が、繊細なメロディーと歌詞に込められています。興味深いことに、この歌詞は詩人・吉野弘の「雪の日に」をモチーフとしており、浜田省吾の吉野弘への敬愛が感じられます。実際、2007年には吉野弘の地元である酒田市民会館で、「雪の日に」の朗読と「悲しみは雪のように」の弾き語りという特別なパフォーマンスが行われました。オリジナルバージョンのボーカルやコーラスアレンジ、ミックスは、アルバム収録のものとは異なっており、まさに「シングル・レコード・バージョン」と言えるでしょう。

ドラマ主題歌バージョン：社会現象を巻き起こした大ヒット

1992年、テレビドラマ『愛という名のもとに』の主題歌として採用された「悲しみは雪のように」は、大幅なアレンジが施され、新たな魅力を放つバージョンとして生まれ変わりました。浜田省吾自身はタイアップに否定的であったにもかかわらず、ドラマ制作側の熱意によって実現したこの起用は、大きな成功を収めました。ドラマは社会現象となるほどの人気となり、主題歌であるこの曲も大ヒット。オリコンシングルチャートで1位を獲得し、10週連続1位という記録を達成、170万枚を超える売上を記録しました。これは浜田省吾のシングルとしては過去最大のヒットであり、現在でも彼の代表曲として広く知られています。アレンジを担当した星勝氏は、この曲が長く愛され続けている理由について、浜田省吾自身の音楽活動への継続的な努力が大きいと評価しています。ドラマでは浜田省吾の楽曲が多数使用され、彼の音楽が大きくフィーチャーされたことも、この大ヒットに貢献したと言えるでしょう。イントロはポリスの「見つめていたい」に似ていると指摘されることもありますが、浜田省吾はジュード・コールというアーティストの作品をイメージソースとしていたと語っています。

ライブパフォーマンスとカバー

最大のヒット曲であるにもかかわらず、「悲しみは雪のように」は、ライブのセットリストから外されることも少なくありません。しかし、歌われる際にはサビの「誰もが」の後、「ウォウウォウ」というコーラスが会場全体に響き渡る一体感溢れる光景が見られます。また、多くのアーティストによってカバーもされており、その人気の高さが伺えます。

まとめ

「悲しみは雪のように」は、オリジナルバージョンとドラマ主題歌バージョンという異なる2つのバージョン、そして母への愛、詩へのオマージュ、そして社会現象を巻き起こしたドラマとの関わりなど、様々な要素が複雑に絡み合った、非常に興味深い楽曲です。その普遍的な感動は、時代を超えて多くの人々の心に響き続け、浜田省吾の代表曲として、これからも愛され続けることでしょう。

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