意富富杼王

意富富杼王（おおほどのおおきみ）

意富富杼王（生没年不詳）は、『古事記』や『上宮記』にその名が伝えられる、古墳時代の皇族（王族）です。大郎子（おおいらつこ）、意富々杼王、意富富等王、大大迹王といった別名も持ちます。父は応神天皇の皇子である稚渟毛二派皇子、母は河派仲彦王の娘・弟日売真若比売命（または百師木伊呂弁）です。また、同母妹の忍坂大中姫は、従兄弟にあたる允恭天皇の妃となりました。

概要

意富富杼王自身の詳しい事績はほとんど伝わっていませんが、『古事記』によると、息長坂君、酒人君、三国君、筑紫米多君などの祖とされています。これらの氏族が越前や近江に勢力を持っていたことから、意富富杼王も父の二俣王と同じ地域で影響力を持っていたと考えられます。

また、『上宮記』逸文に記された系譜によれば、中斯知命を妃とし、乎非王を儲けました。この乎非王の孫が、後の第26代継体天皇にあたるとされています。意富富杼王は、継体天皇につながる重要な人物として位置づけられています。

妻である中斯知命については、詳しい記録が残っておらず、その正体は不明です。しかし、写本によっては「知」と「姫」の字が誤って書かれている可能性があり、これを中斯姫命と解釈すると、履中天皇と草香幡梭皇女の間に生まれた中磯皇女が想起されます。中磯皇女は、大草香[[皇子]]と結婚して眉輪王を生みましたが、後に大草香[[皇子]]が安康天皇に殺害されると、安康天皇の皇后となりました。安康紀や雄略即位前紀には、彼女が中蒂姫命、中蒂姫皇女、長田大娘皇女とも記されています。このことから、中斯姫命が中蒂姫命と同一人物である可能性も指摘されています。もしそうであれば、『上宮記』の編纂者は、履中天皇の皇女であり、大草香[[皇子]]の妃、そして安康天皇の皇后という、著名な女性である中斯姫命について、特に説明を加える必要がないと判断したのかもしれません。

意富富等という名前は、継体天皇の諱である男大迹（オホド）と兄弟のように対応しているため、本来は別人であり、大郎子と呼ばれていたのではないかという説もあります。大郎子という名前は、「若君」程度の意味合いを持つことから、意富富杼王の子孫であり、『原帝紀』を編纂したとされる欽明天皇から見て、傍系の5世紀の大王達は系譜的に重視されておらず、その記憶が忘れ去られやすかったのではないかとも考えられています。

系譜

祖父：応神天皇
父：稚渟毛二派皇子
母：弟日売真若比売命（百師木伊呂弁）
同母妹：忍坂大中姫
妃：中斯知命（中斯姫命の可能性あり）
子：乎非王

脚注

『古事記』
『上宮記』

関連項目

* 飛鳥時代以前の人物一覧

意富富杼王は、その具体的な事績は不明な点が多いものの、古代の豪族や天皇家の系譜を理解する上で重要な人物です。彼の存在は、古代史の複雑さと深さを物語っています。

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