乎非王

乎非王（おいのおおきみ）について

乎非王（生没年不詳）は、5世紀頃に存在したとされる皇族（王族）です。その名前は、『釈日本紀』に引用された「上宮記」の逸文にのみ見られ、歴史的な事績はほとんど伝わっていません。しかし、その系譜は古代史を考察する上で重要な意味を持っています。

名前について

『古事記伝』の釈文などでは、「宇非王（うひのおおきみ）」と表記されることがありますが、これは誤りであるとされています。黛弘道は、久米王の子である男王や姪娘の存在から、「乎非王」は「甥王」であり、允恭天皇の后となった忍坂大中姫の甥であることから、この名前が付けられたと推測しました。

系譜

乎非王の父は意富富杼王（おおほどのおおきみ）、母は中斯知命（なかしちのみこと）です。応神天皇の曾孫であり、忍坂大中姫命の甥にあたります。また、後の継体天皇の祖父としても知られています。

同父兄弟には、阿居乃王（あけのみこ）や都紀女加（つきめか）が推定されています。妻は牟義都（むげつ）国造伊自牟良君の娘である久留比売命（くるひめのみこと）で、間に汙斯王（うしのおおきみ、後の彦主人王）をもうけました。

乎非王の概要

乎非王に関する直接的な記録は「上宮記」逸文にのみ見られるため、具体的な事績は不明です。しかし、系譜を辿ると、応神天皇から継体天皇へと続く重要な位置にいることがわかります。具体的には、「凡牟都和希王（応神天皇）― 若野毛二俣王（稚野毛二派皇子）― 大郎子（意富富杼王）― 乎非王 ― 汙斯王（彦主人王）― 乎富等大公王（継体天皇）」という系譜になります。

この系譜について、川口勝康は若野毛二俣王と大郎子を除いた「応神天皇 ― 乎非王 ― 汙斯王 ― 継体天皇」という形が原型であると主張しています。この見解は、系譜の簡略化という観点から注目されます。

異表記について

中世の史書や系譜類（『水鏡』、『愚管抄』、『神皇正統記』、『紹運録』など）では、継体天皇の祖父として「私斐王」という名前で記録されていることがあります。しかし、「私」という字を借字として用いた例が他にないことから、これは「弘斐王」の誤りであり、乎非王を指していると考えられています。このような異表記が存在するということは、かつて「上宮記」以外にも継体の出自系譜を伝える史料が存在した可能性を示唆しています。例えば、『日本書紀』の系図がそうであったかもしれません。

まとめ

乎非王は、その事績こそ不明な点が多いものの、古代の皇室系図において重要な位置を占める人物です。特に、応神天皇から継体天皇へと続く系譜の中核に位置し、その存在は古代史を考察する上で欠かせない要素となっています。

関連項目

* 飛鳥時代以前の人物一覧

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