愚公山を移す

愚公山を移す

「愚公山を移す」という言葉は、中国の戦国時代に成立した古典『列子』の中で語られる逸話に由来しています。この物語は、愚公という名の高齢者が自宅近くにある山を移動させるために、家族全員で山を崩し始める姿を描いています。このような行動は一見無謀で、不可能に思えるものでした。

物語の背景

愚公の住まいの近くには太行山と王屋山があります。彼はこれらの山が自宅の生活にとって邪魔だと感じ、一念発起して山を崩そうと決意しました。しかし、彼の取り組みを見守っていた智叟という人物が、「人が力を使って山を動かすなんて不可能である」と批判しました。

そこで愚公は、「山は増えないのだから、我々が子や孫にこの事業を引き継いでいけば、いつか必ず山を移動できる」と自信を持って応じました。この言葉には、未来への希望と人間の努力の重要性が込められています。

天帝の登場

この愚公の熱意を感知した天帝は、姱娥の二人の子に山を背負わせて、実際に山を動かすことができたとされます。このように、物語は人間の努力が神の助けを得て実を結ぶという教訓を含んでいます。

毛沢東と現代への影響

20世紀に入ると、毛沢東が1945年6月に行った演説の中でこの物語を引用しました。彼は、日本と中国国民党政権を二つの山に例え、共産党を愚公に重ね合わせました。毛沢東は、どんなに強大な敵が目の前にあっても、私たちが愚公のように山を崩し続ければ、天帝にあたる中国人民が支えてくれると力強く訴えました。

毛沢東のこの逸話は、文化大革命の期間中に「人民に奉仕する」「ベチューンを記念する」といった短い文章と共に「老三篇」というタイトルで広まりました。これらは普及パンフレットとして広く配布され、多くの人々に読まれることとなりました。また、日本では中国語の初級教材としても使用されています。

スターリンとの対話

毛沢東はまた、ソ連を訪問した際にスターリンにもこの伝説を紹介しました。スターリンはこの話に興味を示し、「我々が協力すれば、山を動かす以上のことができるでしょう」と応じたと言われています。これにより、愚公の話は国際的な場面でも影響を持つこととなりました。

この物語は、奮闘と希望、他者との協力の重要性を象徴しており、時代を超えて多くの人々に感動や勇気を与え続けています。

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