愛のさかあがり

愛のさかあがり

『愛のさかあがり』は、日本の漫画家とり・みきによるユニークなエッセイ・コミックです。この作品は、1985年7月29日から1986年11月24日まで『平凡パンチ』（マガジンハウス）に連載されました。間違って1980年から1981年までの連載とされることもありますが、実際の連載期間はこの通りです。

概要

作者のとり・みきが「愛」を探し求め、様々な場所を訪れたり、多様な人々と出会ったりする様子が描かれています。週刊漫画誌でのギャグ作品から一歩踏み出し、「存在そのものや体験が面白い」という視点から作品が生まれました。エッセイ形式と取材、インタビュー、さらに友人や読者の体験談を元に展開される多面的な内容が特徴であり、作者自身はこの作品を「動き回るエッセイ・コミック」と自負しています。

ただし、小松左京からはその方向性に批判を受け、留守電で禁足を申し付けられる一幕も。作者が初めて油性マーカーを使用した作品でもあります。各話は基本的に9ページで構成されていますが、原田知世のインタビューやフィリピン旅行など特別なエピソードではページ数が増加します。

登場人物

『愛のさかあがり』には、作者であり主人公でもあるとり・みきが中心となります。「愛」を求めて旅をする彼女は、サングラスがトレードマークであり、自ら「ミキヲちゃん」と名乗ります。彼女の友人やサポートキャラクターも多彩で、下北沢の本屋の店員であるタキタくんは、作者の分身とも言える存在です。

鹿野司はサイエンスライターで、「タミさん」として親しまれます。彼は日本SF大会に参加したり、金縛りについての解説を提供したりします。また、イラストレーターの米田裕も脇役として頻繁に登場し、アシスタントの品川KIDは短期間ながらも印象に残るキャラクターです。

担当編集者も数人登場しますが、小野寺寛晃が最も長く彼女を支えます。その間に、読者からの寄稿を元にしたさまざまな企画も盛り込まれ、愛や体験が共感を呼びます。

企画とエピソード

この作品には、読者からの投稿を元にした企画がいくつか存在します。例えば「愛のかなしばり」では金縛り体験談が紹介され、当初は作者の知人の話に限られていましたが、読者からのエピソードが増えてきました。

「街角のオジギビト」では、工事現場の看板キャラクターを収集し、その後も続けられています。さらに、「イタイ話」では共感できる痛いエピソードが集められ、テレビ番組でコーナー化されたこともあります。

他にも「ちょっと貧しいイイ話」や「ご近所のレプリカント」といった企画が存在し、読者参加型の要素が強いです。情報収集の際には、連載時の募集用アドレスが何度か変更されたものの、寄せられた体験談は多くの読者の共感を得ました。

書籍情報

この作品は角川書店と筑摩書房から書籍化されており、それぞれの版には特別な註釈や解説が付いています。角川版には読者との会話や未収録の体験談が追加された版もあり、特に「天の巻」「地の巻」「無用の巻」といった形で刊行されています。ちくま文庫版もあり、解説や作者のあとがきが収録されていますが、連載時の形式に近いものになっています。

この作品は、エッセイ・コミックというジャンルを新たに切り開き、多様な体験を持ち込むことで読者に愛された一作品として位置付けられています。

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