愛のメモリー (曲)

愛のメモリー

「愛のメモリー」は、1977年8月10日に松崎しげるがリリースした14枚目のシングルです。この楽曲は、ビクターレコードのディレクターがスペインのマジョルカで行われる「マジョルカ音楽祭」の参加に向けて制作されたもので、当時のヨーロッパポップス界で非常に注目されていた大会でした。

この音楽祭には、フランシス・レイやポール・モーリア、ミシェル・ルグランなどの著名な音楽家が審査員として名を連ねており、そこでの評価は歌手にとって大きな意味を持っていました。特に松崎しげるは、この楽曲のために選ばれ、高い歌唱力とパフォーマンスを発揮しました。

楽曲制作にあたっては、作詞をたかたかしが担当し、作曲を馬飼野康二が手がけました。たかは古典的な歌からインスパイアを受け、馬飼野はヘンリー・マンシーニの「ひまわり」を参考にするなどして、楽曲は「愛の微笑み」として完成しました。音楽祭では、インパクトを与えるためにサビをスペイン語にするなどの工夫が凝らされました。

本番では松崎の優れたパフォーマンスにより、松崎自身は最優秀歌唱賞を受賞し、総合ランキングでも第2位に入賞しました。しかし、日本国内ではこの受賞に対する関心は低く、松崎は自身の曲のプロモーションに苦労することになります。彼はかつての仕事仲間にお願いし、江崎グリコのアーモンド・チョコレートのCMに楽曲を使ってもらうことに成功しました。

1977年に三浦友和と山口百恵が共演するCMで「愛の微笑み」が使用されたことで注目され、歌詞を一部改訂して「愛のメモリー」としてリリースすることになります。この新たなタイトルのもと、曲は急速にヒットし、80万枚の売上を記録しました。さらに、その年の冬に行われた『NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たしました。

この曲は1978年春の第50回選抜高校野球大会の行進曲としても使用され、松崎にとっては高校野球の憧れの舞台である甲子園に関わる機会も得ました。その後、1993年10月27日には別バージョンのシングルがリリースされ、時代を超えて多くの人々に親しまれています。

また、2005年には音楽配信サービス『iTunes Music Store』の日本版が始まり、過去の名曲としてこの楽曲が話題になりました。特にネット上での新たな人気の高まりに伴い、「シゲる」という言葉が生まれるなど、この曲に関する再評価が進みました。

2012年には35周年を記念して、「愛のメモリー 35th Anniversary Edition」として多様なアレンジが収録されたマキシシングルが発売されました。オリコンでは初登場79位を記録し、25年ぶりのシングルTOP100入りを果たしました。さらに、新たなバージョンのアレンジも多く、オリジナル曲を聴く機会が増えています。

このように「愛のメモリー」は、発表から数十年を経てもなお、多くの人々に愛され続ける楽曲であり、松崎しげるのキャリアの中でも特に重要な位置を占める作品となっています。

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