愛の悲しみ

愛の悲しみ (Liebesleid)

フリッツ・クライスラー作曲のヴァイオリンとピアノのための名曲「愛の悲しみ」。1905年に出版され、「愛の喜び」(Liebesfreud) と対をなす作品として知られています。さらに「美しきロスマリン」(Schön Rosmarin) を加えた3曲は、「ウィーン古典舞曲集」(Alt-Wiener Tanzweisen) と呼ばれ、広く親しまれています。

一見すると演奏は容易に感じられますが、その実、独特の情感を表現するには高度な技術と深い理解が求められる、奥深い楽曲です。多くのヴァイオリニストにとって、避けて通れない重要なレパートリーの一つと言えるでしょう。

楽曲構成

調性: イ短調
拍子: 4分の3拍子
* 形式: 三部形式

詳細

レントラーの緩やかな三拍子に乗せて、ヴァイオリンが物憂げな旋律を奏でます。五度音程を効果的に用いることで、甘美な中にもほのかな悲しみが感じられる、独特の情感を生み出しています。特に、低音弦の高音ポジションを使用することで、音色に深みと渋みを加え、楽曲全体の雰囲気を高めています。

中間部はイ長調に転調し、雰囲気が一変します。落ち着いた穏やかな旋律が中心となり、技巧的なフラジオレットが効果的に使用されています。ヴァイオリンが主役となり、その卓越した技術を披露する部分でもあります。全体を通して、クライスラーならではの美しい旋律と、ヴァイオリンの魅力を最大限に引き出す技巧が凝縮された、珠玉の作品と言えるでしょう。

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