愛はクロスオーバー

映画『愛はクロスオーバー』

『愛はクロスオーバー』は、1987年11月14日に公開された日本の劇場映画です。上映時間は100分、カラー作品として制作されました。高速で駆け抜けるフォーミュラ3レースの世界を舞台に、過去の悲劇を背負った人々の再会と、そこから生まれる新たな人間関係、そしてラブロマンスを描いたドラマです。特に、シンガーソングライターである稲垣潤一の楽曲が全編にわたり使用されており、音楽面が重視された作品としても知られています。

あらすじ

物語は、トップレーサーだった伊佐山亘がレース中の事故で命を落としてから7年後の世界を舞台に展開します。残された妻の岡崎麻子は、雑誌記者として働きながら、一人娘の百合を懸命に育てていました。一方、伊佐山のレーサー仲間だった多田圭一は、レースへの情熱を失わず、チューニング工場を経営しながら、若いドライバーのユウジと共に自身のチーム「チョイス」を育て上げています。しかし、チームは資金難という厳しい現実に直面していました。

ある日、「チョイス」のマシンが突然火を吹くというトラブルが発生します。幸い、向かいの喫茶店にいた一人の男が消火を手伝ってくれたおかげで、マシンは間一髪で難を逃れます。その男こそ、かつてレーサーであり、皮肉にも伊佐山の事故を引き起こすことになった梶山潤でした。事故の償いからレーサーを引退した梶山は、現在はひっそりとスナックを営んでいます。しかし、彼は密かに「JK」というイニシャルで、遺児となった百合へクリスマスプレゼントや手紙を送り続けていたのです。

メカニックに詳しく、頼りがいのある梶山は、すぐにチームのユウジや多田の妹であるめぐみと打ち解け、幼い百合も彼になついていきます。多田も梶山の技術力を認め、一時的にマシンの修理に協力してくれるよう依頼します。夫の事故に関わった人物の突然の出現に麻子は戸惑いを隠せませんが、実は百合が子供心に「お父さんを死なせた人に一度会ってみたい」という思いから、手紙で梶山を呼び寄せていたのでした。一方、梶山の恋人である元木理恵は、彼がいつまでも過去に囚われていることに苛立ちを感じています。

秋のレースに向けて多田は全てを賭けていましたが、抱え込んだ莫大な借金により、チームの出場自体が危ぶまれます。多田のレースへの熱意に触れた梶山は、自身の友人でありトップレーサーの国枝に「チョイス」への資金援助を依頼します。しかし、国枝が提示した条件は、梶山が再びレーサーとしてレースに出場することでした。梶山は復帰を決意しますが、多田はかつて敵視していた国枝からの援助をプライドから頑なに拒みます。これは多田個人の問題に留まらず、「チョイス」チーム全体の将来に関わる重大な局面でした。麻子は多田の苦悩を理解し、彼の説得を試みます。

伊佐山の死後、麻子と多田は互いに惹かれあいながらも、それぞれの立場や責任のためにその思いを胸に秘め、自分を犠牲にして生きてきました。麻子の真摯な思いやりは多田の心を動かし、ついに彼は国枝からの援助を受け入れる決断をします。「チョイス」はレースに向けて一気に準備を進めます。そしてレース当日、サーキットは熱狂に包まれる中、梶山はチームの、そして関わる全ての人々の夢を乗せて、7年ぶりにスタートラインに立ったのでした。

スタッフ・キャスト

スタッフ

監督：栗原剛志
脚本：長瀬未代子
原案：岡田麻子
音楽：重実博
主題歌・挿入歌：稲垣潤一（「君のためにバラードを」「April」「夏の行方」「ブルージン・ピエロ」「愛は腕の中で」「振り向いたときそこに見える階段を数えたことがあるだろうか」「夏のクラクション」「Long after midnight（インスト）」「Jの彼女」「ドラマティック・レイン」「だけど悲しくて」「バチェラーガール（インスト）」「1ダースの言い訳」）
撮影：川上皓市
美術：寒竹恒雄、及川一
照明：佐藤譲
編集：市原啓子

ほか多数のスタッフが制作に携わっています。

キャスト

岡崎麻子：名取裕子
梶山潤：永島敏行
多田圭一：平田満
国枝修二：稲垣潤一
元木理恵：田中美佐子
河村ユウジ：織田裕二
多田めぐみ：川島みき
岡崎百合：吉沢梨絵

夏木陽介、山谷初男、阿木燿子らが友情出演しています。

製作・興行

本作は、製作会社の一つである幻燈社と東映の連携企画として制作されました。幻燈社は、本作の企画・製作者の一人である前田勝弘が設立に関わっており、監督の栗原剛志も、幻燈社作品を多く手がける東陽一監督のもとでチーフ助監督を務めた経験があります。主演の名取裕子は、『吉原炎上』での遊女役から一転、現代的なキャリアウーマン役を演じて話題となりました。

配給は東映クラシックフィルムが行い、同じ幻燈社製作の『アラカルト・カンパニー』と二本立てで公開されました。主に都内の東映洋画系劇場など7ヶ所以上で上映され、配収は1億円を記録しました。これは同時期に同じ系列で公開された単館上映作品などと比較すると、比較的成功した興行成績と言えます。

外部リンク

愛はクロスオーバー - allcinema
* 愛はクロスオーバー - KINENOTE

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