愛を積むひと

愛を積むひと

『愛を積むひと』は、2015年に公開された朝原雄三監督による日本の映画です。エドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積むひと」を原作とし、舞台を北海道に移して、夫婦の愛、若者の葛藤、家族の再生を描いています。

あらすじ

東京で町工場を経営していた小林篤史と良子夫婦は、経営難から北海道・美瑛町へ移住します。人里離れた地に建つロッジ風の家には、前の住人が作りかけの石塀が残されていました。篤史は気乗りしませんでしたが、良子の勧めで石塀作りを始めることに。

良子は心臓病を患っており、自分の死後、夫が孤独にならないように、周囲との交流を願っていました。そんな中、地元の造園業者から見習い職人の徹が派遣されてきます。高校を中退したばかりの徹は、過去に非行歴があり、悪友の拓也と関係が続いていました。拓也の命令で、徹は小林夫妻の家を空き巣に案内してしまいます。しかし、そこに良子が帰宅し、拓也に突き飛ばされた良子は気を失ってしまいます。

空き巣の共犯者とは言えないまま、徹は良子の入院を心配します。良子の代わりに家事を手伝うため、徹は恋人の紗綾を連れてきます。紗綾は良子のために献身的に尽くし、良子はそんな2人を誕生日会に招待します。篤史は良子に真珠を贈ります。それは、2人が新婚時代から毎年一つずつ買い足してきたネックレスでした。しかし、そのネックレスは空き巣の際に盗まれてしまっていました。

良子の病状は悪化し、秋に美しい森の中で亡くなってしまいます。葬儀には、東京から一人娘の聡子が駆けつけますが、かつて不倫騒動を起こした聡子を、篤史は未だに許せずにいました。良子の死後、紗綾は良子からの手紙を篤史に届けます。そこには、篤史に石塀を完成させて欲しいという願いが綴られていました。

紗綾の妊娠を知った直後、徹は空き巣の件で警察に連行されます。篤史は被害届を取り下げ、造園会社を解雇された徹を家に住まわせ、一緒に石塀を作り始めます。紗綾の両親は徹との結婚に反対していましたが、篤史の説得により、最終的には2人を認めます。徹は大規模な酪農牧場で修行することになり、紗綾は高校卒業後に男の子を出産し、彼の帰りを待ちます。

石塀作りを通して、篤史は近隣住民と親交を深めます。ある夜、篤史は良子の手紙を見つけます。そこには、聡子に愛を伝えて欲しいという良子の願いが書かれていました。

篤史は東京へ行き、聡子に会おうとしますが、躊躇してしまいます。しかし、保育園児の女の子を連れた聡子と偶然出会います。聡子は、妻を亡くした男性と交際しており、プロポーズされたことを篤史に告げます。

ついに石塀が完成します。篤史は良子の遺影を持って、40年ぶりに十勝岳に登ります。そこで足を滑らせて怪我をしてしまいますが、病院に駆けつけた聡子と和解することができました。良子の手紙の最後の言葉は、篤史に石塀の土台のように次の世代を支え、持ち前の優しさという石を積み続けて欲しいというものでした。

キャスト

小林 篤史：佐藤浩市
小林 良子：樋口可南子
小林 聡子：北川景子
杉本 徹：野村周平
上田 紗英：杉咲花
上田 熊二：柄本明
上田 美智子：吉田羊

受賞

第40回ブリュッセル国際映画祭 最優秀女優賞（樋口可南子）
第40回報知映画賞 主演男優賞（佐藤浩市）、助演女優賞（吉田羊）
第58回ブルーリボン賞 助演女優賞（吉田羊）

『愛を積むひと』は、夫婦の愛、家族の絆、そして人との繋がりを描いた感動的な作品です。北海道の美しい風景の中で繰り広げられる人間ドラマは、観る人の心を温かくしてくれるでしょう。

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