愛国殺人

愛国殺人

『愛国殺人』（あいこくさつじん）は、1940年にアガサ・クリスティにより発表された推理小説であり、原題は「One, Two, Buckle My Shoe」です。このタイトルは、マザー・グースの童謡の一部を参考にしており、以降20までの数字が章の見出しに使用されています。ただし、この物語には、童謡の歌詞を用いて犯罪を演出する「見立て殺人」は含まれていません。

出版歴

この作品は、イギリスで1940年11月に出版され、アメリカでは1941年2月に「The Patriotic Murders」というタイトルで刊行されました。クリスティの作品の中でも評価が高く、特にその巧みな構成や独特のトリックが注目されています。

あらすじ

物語は、歯科医のヘンリイ・モーリイの診療所から始まります。様々な背景を持つ患者たちが集まり、銀行の頭取や元女優、謎のギリシャ人などが登場します。名探偵エルキュール・ポアロも、この診療所を訪れますが、彼の治療が終わるや否や、診療を担当したモーリイが自殺したとの知らせが届くのです。

ポアロは、モーリイの死を自殺とするのか、他殺の可能性を探るのかを考慮しつつ捜査を開始します。そして、その後、同日に歯科を訪れた他の患者も次々と殺害される事件が発生します。事件捜査を通じて、ポアロはマザー・グースの数え歌を参考にしながら、犯人の動機と手法を探ります。

クライマックスでは、ポアロが真犯人にたどり着き、その動機が「国を愛するがゆえの殺人」であることを明かされます。この意外な展開は、読者に強い印象を残します。

登場人物

『愛国殺人』には、以下の多彩なキャラクターが登場します：

• - ヘンリイ・モーリイ：歯科医
• - ジョージイナ・モーリイ：モーリイの妹
• - ライリイ：ヘンリイのパートナーでアイルランド人
• - グラディス・ネヴィル：モーリイの秘書
• - フランク・カーター：グラディスの恋人
• - アグネス・フレッチャー：モーリイ家の小間使い
• - アムバライオティス：謎のギリシャ人
• - メイベル・セインズバリイ・シール：元女優
• - レジナルド・バーンズ：内務省の退職官吏
• - アリステア・ブラント：銀行頭取
• - エルキュール・ポアロ：私立探偵

これらの人物たちが複雑に絡み合い、事件をより魅力的に演出しています。

評価

本書は推理小説の金字塔とされ、多くの著名な評論家や作家から高い評価を受けています。日本の作家江戸川乱歩も、彼の「ベスト8」の一冊としてこの作品を挙げていることで、その評価の高さが改めて示されています。

日本語訳

『愛国殺人』は、日本では早川書房から独占的に翻訳されています。日本語のタイトルはアメリカ版原題「The Patriotic Murders」の訳によるもので、広く親しまれています。

翻案作品

本作は、テレビドラマやラジオドラマなど様々なメディアで翻案されており、特に1992年に放送された『名探偵ポワロ』第33話「愛国殺人」は多くのファンに楽しまれました。これらの翻案は、原作の魅力を新しい形で再発見させてくれます。

本書『愛国殺人』は、クリスティの才能が際立った作品であり、推理小説ファンにとっては必読の一冊です。

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