感情の分類

感情の分類

感情の分類は、人間の感情を理解し、異なる感情を区別するための重要な手法です。この分類には、基本感情説と次元説という二つの大きな理論が存在します。

基本感情説

基本感情説では、喜び、恐れ、驚き、嫌悪、怒り、悲しみといった基本的な感情があると考えられています。この理論を代表する研究者の一人がアメリカの心理学者ポール・エクマンです。彼は、さまざまな文化圏の人々を調査し、これらの感情が全人類に共通するものであり、遺伝的な基盤を持つと結論付けました。また、エクマンは基本感情として挙げた6つの感情に加え、1990年代にはさらに11種類の感情を追加しました。これにより、感情の理解をより深めることが可能となりました。

プルチックの感情の輪

同じくアメリカの心理学者ロバート・プルチックは、1980年に「感情の輪」を提唱しました。このモデルは、8つの基本感情（喜び、期待、怒り、嫌悪、悲しみ、驚き、恐れ、信頼）を基に、その感情の強さや組み合わせを視覚的に表現したものです。プルチックの感情の輪では、感情同士の関係性や、強弱の程度を理解することができます。

ダライ・ラマ14世とエクマンの分類

2016年、チベットのダライ・ラマ14世とポール・エクマンは、感情を5つのカテゴリーに集約しました。この5つのカテゴリーには、楽しみ、嫌気、悲しみ、恐れ、怒りが含まれており、それぞれのカテゴリーにはさらに詳細な感情が分けられています。これにより、感情の多様性をより明確に理解するための枠組みが提供されました。たとえば、楽しみには、興奮、喜び、安心などが含まれ、悲しみには苦悩、絶望、無力感が挙げられます。

次元説

基本感情説に対抗する理論として次元説があります。次元説では、感情を独立した基本的なものとして捉えるのではなく、「快 ― 不快」や「覚醒 ― 眠気」といった次元に基づいて感情を捉えます。この考え方は、感情が連続的に変化する、多様な要素の組み合わせから成り立つという主張をしています。たとえば、ラッセルの感情円環モデルは、その代表的な理論です。ラッセルのモデルでは、感情の軸を「快 ― 不快」と「覚醒 ― 眠気」に設定し、さまざまな感情が円環上に配置されています。

その他の感情分類

感情の分類は、基本感情説や次元説以外にも多岐にわたります。例えば、哲学者スピノザやデカルト、ダーウィンによる独自の分類法が存在します。スピノザは「喜び」「悲しみ」「欲望」の三つを基本感情とし、48種類に分類しました。デカルトは、「驚き」「愛」「憎しみ」などを含む6つの情念を提唱しました。

また、東洋医学では「七情」として「喜」「怒」「悲」「懼」「愛」「悪」「欲」といった感情が挙げられており、中国では「五情」（喜、怒、哀、楽、怨）という感情法も広く認知されています。これらの理論は、文化や時代によって異なる感情の理解を反映しています。

まとめ

このように、感情の分類にはさまざまなアプローチがあり、各理論は人間の感情理解を深めるための重要なフレームワークを提供しています。感情という複雑な現象を理解するためには、これらの理論に基づいて多面的な視点から考察することが求められます。

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