感状

感状（かんじょう）

感状とは、主に軍事的な功労を果たした下位の者に対して、上位の者がその業績を評価し、賞賛の意を示すために発行された文書を指します。この形式の賞賛文書は、日本の歴史において重要な意味を持ち、特に武士階級の間で広く用いられました。

中世・近世の感状

中世から近世にかけて、この感状は「御感」（ぎょかん）として知られ、主に武士が家臣の忠義や勇気を称えるために用いられました。この御感は書状として記されることから、感状という名称が付けられたと考えられています。
感状の起源は鎌倉時代に遡り、主君や高位の官職の者がその家臣の武勲を称え、感状を書いて下賜する習慣が始まったとされます。特に戦国時代においては、武士の地位が頻繁に変動する中で、感状は重要視されました。武士たちは、再仕官の際にこの感状を携え、その証明とすることが求められました。

また、江戸時代には引き続き感状が発行され、多くの功績を挙げた者に対して贈られました。例えば、大坂の陣においても沢山の感状が幕府から授与され、優れた功績を持つ武士には徳川家康自らの直筆の感状も存在しました。

近代の感状

近代においては、感状は軍隊における高級指揮官からその配下へ贈られる栄誉の一つとなりました。特に顕著な戦功を挙げた将兵に対して発行され、1904年に制定された軍令に基づいて行われました。この授与の権限は師団長以上の高級指揮官に与えられており、敵の指揮官を捕らえたり、敵軍の軍旗を奪うなどの特異な功績が条件とされました。

感状は「個人感状」と「部隊感状」に分類され、個人感状は非常に稀にしか授与されないため、特に価値のある栄誉とされました。感状を受け取った者は、そのことを部下に報告する責任があり、授与の事実は軍部大臣を通じて天皇に報告されることも重要な側面でした。

日中戦争中の1940年からは、生存者に対する感状の授与が一時停止され、戦死者のみに与えられました。これにより、金鵄勲章の代替品としての役割も果たすようになったのです。特に「加藤隼戦闘隊」は、太平洋戦争中に最多の感状を受け取り、その戦功が認められました。

返り感状

返り感状という形も存在し、これは通常主君から家臣への感謝の形式ですが、敵との戦いを通じて感銘を受けた結果、感状を贈ることもありました。上杉謙信が川中島の戦いで槍を突いてきた相手に感状を送った例や、戊辰戦争時の事例がその代表です。これらは感状の意義が単なる賞賛にとどまらず、交戦相手の武勇も認める文化があったことを示しています。

まとめ

感状は日本の歴史において、武士階級の名誉や忠義を象徴する重要な文書でした。時代を通じて、武士、軍人、そしてその功績を記録し、称賛する手段として用いられ、特に戦国時代や近代においてその重要性が顕著でした。また、感状の形式は単なる文書にとどまらず、武士としての名誉や地位を象徴するものであったことが、今なお評価されています。

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