慈遍

慈遍（じへん）

慈遍は、生没年不詳の鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての天台宗の学僧であり、同時に神道家としても活動しました。俗名は兼清と称し、卜部兼顕の子として生まれました。

兄弟について

「徒然草」の作者として知られる卜部兼好とは兄弟であるとされていますが、卜部氏の系図には後世の加筆が多く見られるため、その詳細な経歴については不明な点が多く残されています。

出家と仏教の道

幼少期に出家し、公尋に師事しました。その後、後醍醐天皇から厚い信任を得ていた天台座主の慈厳僧正に仕え、法印に任じられるなど、天台宗の僧侶として重要な地位を占めました。しかし、彼は仏教の知識だけでなく、神道にも深い関心を抱いていました。

神道への傾倒

特に伊勢神道を受け入れ、神道家としての側面も持つようになりました。このことが、彼の思想形成に大きな影響を与えたと考えられます。

南朝での活動

南北朝時代には、南朝側につき、天皇を神意に基づく神国日本の永遠の君主とする立場を表明しました。当時の政治情勢において、宗教家が政治的立場を表明することは珍しくありませんでしたが、慈遍の場合は、神道と仏教の融合した独自の思想が、その行動を支えていたと考えられます。

著作

慈遍は、いくつかの著作を残しており、その内容は彼の思想を理解する上で重要です。主な著書として、「旧事本紀玄義」「豊葦原神風和記」「天地神祇審鎮要記」などがあります。これらの著作を通して、慈遍が仏教と神道の両方に精通し、独自の思想を構築していたことが伺えます。

まとめ

慈遍は、天台宗の僧侶でありながら神道にも深く関わり、独自の思想を築き上げた人物です。彼の著作は、当時の宗教観や政治観を理解する上で貴重な資料となっています。また、その生涯は謎に包まれている部分も多く、今後の研究が期待される人物でもあります。

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