伊勢神道

伊勢神道の概要

伊勢神道（いせしんとう）は、伊勢神宮に由来する神道の思想体系であり、主に外宮の神職である度会氏の手によって広まりました。この流派は度会神道とも呼ばれており、特に鎌倉時代後期に興隆しました。

歴史的背景

伊勢神道は、他の神道の流派に対する抵抗の中で形成されました。特に、本地垂迹説が主流であった当時、反本地垂迹説として位置づけられる伊勢神道は、外宮の祭神である豊受大神を天之御中主神や国常立尊と同一視し、内宮を凌駕する神格を提唱しました。これにより、外宮の位置付けを強化し、神国思想を強調する方向に進みました。

教義の特徴

伊勢神道は、主に以下の3つの側面から構成されています。1つ目は「祭神論」で、外宮の祭神を天御中主神や国常立尊とし、内宮の天照大神を越える絶対神として位置づけることにあります。2つ目は「正直」と「清浄」という、神道における重要な倫理観です。これらは心の清さを重視し、祭祀の重要性を説いたもので、厳格な祭祀と斎戒を通じて心の浄化を目指します。3つ目は「神国思想」で、日本の皇統や神宮の尊厳を唱え、全ての人間が神の子孫であるという考え方を示しました。

学派の形成

まず、鎌倉から室町時代にかけて度会行忠が神道の理論を整理し、またその後をついだ度会家行が『類聚神祇本源』を著して伊勢神道の教義体系を確立しました。これにより、伊勢神道は組織化され、広く普及しました。特に室町時代には、神道と儒教、仏教の関係が再評価され、伊勢神道がその中心的存在としての地位を確立していきました。

教典の重要性

伊勢神道には、『神道五部書』という教典が存在します。
1. 次第記 - 伊勢神宮の祭神とその鎮座の歴史を記録。
2. 伝記 - 伊勢両宮の鎮座の経緯を示す。
3. 本紀 - 外宮の鎮座の歴史を詳述。
4. 宝基本紀 - 教義的な内容が示され、神宮建築の解釈も含む。
5. 倭姫命世記 - 倭姫命による神宮の創祀に関する物語。

これらの文献は、伊勢神道の教義を理解する上で不可欠であり、またその教えの重要性を示しています。

江戸時代の変化

江戸時代に入ると、伊勢神道は出口延佳によって再興され、様々な地域で広がりました。彼は日常生活における神道の重要性を強調し、「祭り」と「祈り」を区別し、後者は万人が許可されるべきものであると説きました。この思想は、神道が日常生活の中に深く根差していることを示しています。

結論

伊勢神道は、神道の中で独自の思想を持つ重要な流派であり、度会氏による神道の体系化を通じて、信仰と実践に大きな影響を与えました。その教えは、正直さや清浄の精神、神国思想を重視し、現代の神道信仰にも影響を与え続けています。伊勢神道は、その歴史と思想によって、神道界での重要な位置を占めています。

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