慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫 (Chronic Subdural Hematoma)

慢性硬膜下血腫は、主に高齢者に見られる疾患で、脳と硬膜の間に血腫が形成される状態です。この疾患は、軽度の頭部外傷が原因であることが多いですが、外傷を受けたことを覚えていない場合も少なくありません。また、脳内圧に関与する疾患に対する治療時などにもリスクが伴うとされています。

症状

この病気の特徴的な症状は、数週間から数ヶ月経過後に見られます。過去に軽い頭部外傷があり、その後は特に異常を感じていなかった状態から、次第に頭痛が生じたり、片側の身体に麻痺が見られることがあり、意識障害や認知機能の低下が進行することがあります。認知症の症状と混同されることがあるため、注意が必要です。慢性硬膜下血腫は、診断が遅れると重症化する可能性があり、適切な治療を行うことで改善が見込めるため、「治療可能な認知症」とも言えます。

疫学

アルコールを常飲する高齢の男性に多く発生する傾向があります。頭部外傷や血管の損傷が原因となることも多いため、高齢者は特にこの疾患に対するリスクが高いとされています。

診断

この疾患は、頭部CTスキャンにより三日月状の血腫が確認されることが特徴です。血腫の周りには被膜が形成されることがあり、MRI検査でも血腫を確認できます。T1やT2の強調画像で高い信号が示されることが一般的です。

治療

治療に関しては、症状が明らかで血腫の量が多い場合には、局所麻酔下でのドレナージ手術が行われます。この手術は比較的低リスクで、術後すぐに改善が見られることが多いため、高齢者でも手術の適応となることが珍しくありません。手術時間はおおよそ30分程度です。逆に、血腫が小さい場合には経過観察のみで自然吸収されることもあります。

予後

手術が迅速に行われると、基本的には良好な予後が期待されます。しかし、ドレナージ手術後の再発率は8～20%とされており、日本の研究では再発率が13.1%であることが示されています。再発は通常、手術後1カ月以内に多く見られるため、術後の管理が重要です。進行が緩やかではありますが、脳ヘルニアを引き起こす可能性があり、その場合は生命の危険や重篤な後遺症が残るリスクがあります。

小児における慢性硬膜下血腫

幼児期、特に生後3～9ヶ月に頻繁に見られる疾患で、出産時の頭部の圧迫が原因とされています。他にも墜落や交通事故、虐待などが要因となることがあります。症状としては、頭部の拡大や嘔吐などが見られ、診断はCTスキャンで確認されることが多いです。

結論

慢性硬膜下血腫は、高齢者を中心に発生する疾患であり、適切な早期診断と治療が極めて重要です。子供の場合もそのリスクが異なるため、注意深い観察が必要です。

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