憲法裁判所 (ハンガリー)

ハンガリー憲法裁判所

ハンガリー憲法裁判所（Alkotmánybíróság）は、エステルゴムに設置された、ハンガリーにおける最高位の司法機関です。首都ブダペストにあるハンガリー最高裁判所と同等の地位にあり、その役割と権限は、1989年に制定された憲法裁判所法（1989年法律第32号）によって規定されています。

沿革

1980年代後半、ソビエト連邦でペレストロイカが進行する中、ハンガリー議会は1989年1月に憲法裁判所設立に関する決議を可決しました。同年10月には、憲法第32条のAを改正し、憲法裁判所に憲法上の根拠を与えました。さらに同年10月19日、議会は憲法裁判所の構成と権限を詳細に定める法律案（1989年法律第32号）を承認し、1990年1月1日に憲法裁判所は正式に発足しました。

ハンガリー基本法の施行に伴い、憲法裁判所の権限には拡大と縮小の両方が生じました。新たに付与された権限としては、個人による憲法訴訟を審理する権限が挙げられます。一方で、民衆訴訟の制度は廃止され、予算や租税など特定の分野においては、違憲審査権が一定の範囲で制限されるようになりました。

構成

憲法裁判所は、15名の裁判官で構成されています。裁判官は互選によって長官を選出し、長官は1名または2名の副長官を指名して補佐させます。憲法裁判所の司法権は独立しており、議会や内閣からの介入は受けません。ただし、予算の決定権と裁判官の人事権は議会が掌握しています。

憲法裁判所は、法律案の合憲性事前審査、現行法の合憲性事後審査、憲法の条文解釈を独占的に行います。基本的人権の侵害に関する民事訴訟・刑事訴訟についても管轄権を有し、大統領の弾劾を行う権限も持っています。ただし、法律案の合憲性事前審査や憲法の条文解釈を要請できるのは、国会議員や閣僚などに限定されています。憲法裁判所は、法律の合憲性を審査する最終的な機関であり、その決定に対して上訴することはできません。

裁判官

ハンガリー憲法では、憲法裁判所の裁判官は議会によって選任されることが定められており、その選出方法も規定されています。裁判官として選任されるためには、法律学において極めて高度な知識を持つ者、または20年以上の実務経験を有する法曹であることが求められます。任官には、議会に設置された指名委員会の調査を経た上で、議会を構成する議員の3分の2以上の賛成を得る必要があります。

裁判官は、選任時に30歳以上である必要があり、定年は62歳です。任期は12年間であり、再任は1度のみ認められています。裁判官には政治活動への参加が禁じられていますが、不逮捕特権が付与されています。また、国務大臣と同額の俸給が支給されます。

歴代憲法裁判所長官

初代：ショーヨム・ラースロー（1990年8月1日 - 1998年11月24日）
第2代：ネーメト・ヤーノシュ（1998年11月24日 - 2003年7月31日）
第3代：ホッロー・アンドラーシュ（2003年8月1日 - 2005年11月12日）
第4代：ビハリ・ミハーイ（2005年11月12日 - 2008年7月2日）
第5代：パチョライ・ペーテル（2008年7月3日 - 2015年2月24日）
第6代：レンコヴィチ・バルナバーシュ（2015年2月25日 - 2016年4月21日）
第7代：シュヨク・タマーシュ（2016年4月21日 - 2024年3月4日）
代行：シャラモン・ラースロー（2024年3月4日 - 6月11日）
第8代：ユハース・イムレ（2024年6月11日 - ）

外部リンク

Alkotmánybíróság（公式ウェブサイト）

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