憲節皇后

憲節皇后（けんせつこうごう）

憲節皇后は、南宋の高宗の最初の正室であり、皇后に遙封されました。彼女の生涯は、激動の時代に翻弄され、南宋と金の間の複雑な関係の中で、その存在は政治的な意味合いを持つことになりました。

生涯

憲節皇后は、開封府祥符県出身で、正五品儀曹の邢煥と妻の熊氏の娘として生まれました。康王趙構（後の高宗）に嫁ぎ、嘉国夫人に封ぜられました。しかし、彼女の運命は靖康の変によって大きく変わります。

靖康の変後、彼女は金に連行され、金軍による凌辱を受け、その途中で悲しいことに流産を経験しました。建炎元年（1127年）、高宗が南宋を建てて皇帝に即位すると、金に抑留されたままの彼女を皇后に封じました。これは、高宗の彼女に対する想いの表れであると同時に、政治的な意味合いも含むものでした。

金に到着後の同年6月7日、彼女は高宗に屈辱を与える目的で、高宗の生母である賢妃韋氏（顕仁皇后）や、高宗の側室（姜酔媚・田春羅）、高宗の娘（趙仏佑・趙神佑など）と共に、洗衣院に落とされました。天会9年（1131年）には、男子を1人産んでいます。

南宋の紹興5年・金の天会13年（1135年）、邢秉懿は洗衣院から解放されました。紹興9年・金の天眷2年（1139年）に金で亡くなりました。彼女の死は、紹興12年・金の皇統2年（1142年）に、賢妃韋氏が南宋で高宗と再会した際に伝えられました。当初の諡は「懿節」でしたが、後に孝宗によって「憲節」へ改諡されました。

彼女の死が明らかになった翌年の紹興13年（1143年）には、側室の呉氏（憲聖慈烈皇后）が新たに皇后に立てられました。

高宗の皇后遙封を巡って

『宋史』憲節皇后伝には、高宗の邢秉懿に対する「16年不娶」の愛の誓いが記されていますが、これには潤色が加えられているという指摘があります。高宗は自身の帝位が動揺することを懸念し、父帝と兄帝の帰国を婉曲に拒みましたが、邢秉懿に関しては積極的であったとされています。しかし、『宋史』潘賢妃伝によると、高宗は側女の潘氏（元懿太子趙旉の母）を皇后に立てようと考えたこともあったようです。また、高宗が逃走中に金軍の襲撃を受けた際のショックで性的不能になった、あるいはペドフィリアであるという噂もあり、邢秉懿に対する夫婦愛の顕示は、これらの疑惑に対するカムフラージュである可能性も指摘されています。

彼女自身に関しては、曹勛が金から南宋へ逃亡した際、耳輪の片方を託し、「耳輪のように夫婦相和すことを願います」と言づてしたという逸話が残っています。

脚注

伝記資料
『靖康稗史箋證』
『宋史』
『宋会要輯稿』

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