懺悔

懺悔：宗教における罪の告白と悔い改め

懺悔とは、神や仏といった超越的な存在、あるいは師や同胞の前で、自身の罪や過ちを告白し、深く悔い改める行為です。宗教によってその対象や方法、意味合いは異なりますが、共通して内面的な浄化や精神的な再生を目的としています。

仏教における懺悔

仏教において、懺悔（さんげ）は、自身の過去の悪行を仏、菩薩、または師の面前で告白し、悔恨の念を抱き、改心することを意味します。サンスクリット語の「忍（忍辱）」を語源とし、苦しみや困難に耐え忍ぶ精神と深く関わっています。

仏教では、定期的に行われる布薩（ふさつ）という儀式の中で、僧侶たちが犯した罪を告白し、懺悔する機会があります。また、僧侶同士が互いに罪を告白し合う「自恣（じし）」という儀式も存在します。さらに、懺悔文と呼ばれる偈文（げもん）を唱えることや、山岳修験道においては登山中に「懺悔、懺悔、六根清浄」と唱えるなど、さまざまな方法で懺悔が行われています。

天台宗の懺法

天台宗では、懺悔をより体系的に行うための儀式として「懺法（せんぼう）」があります。これは、無意識のうちに犯した悪行を懺悔し、貪欲、怒り、愚痴といった三毒（さんどく）を取り除き、心を清らかにするための儀式です。12世紀頃には宮中行事にも取り入れられ、武家政権成立後も盛んに行われていました。『吾妻鑑』には、北条政子が法華懺法を行った記録が残されています。懺法には、法華経に基づく法華懺法、観世音菩薩を本尊とする観音懺法、阿弥陀懺法、吉祥懺法など、さまざまな種類があります。

懺法と同様に、悔過（けか）という儀式も罪の悔い改めを目的としています。『日本書紀』には、雨乞いが失敗した際に、仏教の教えに基づいて悔過を行った記録が残されています。これは、道教的な儀礼から仏教的な儀礼へと変化したことを示す事例といえます。

修験道における懺悔

仏教の影響を強く受けた修験道においても、懺悔は重要な修行の一つです。山神への秘密の告白と祓いを組み合わせたもので、直接的に対象となる神仏に対して懺悔を行う点が、仏教やキリスト教の懺悔と異なる特徴です。

キリスト教における懺悔

キリスト教においては、一般的には「ざんげ」と読まれますが、本来の読み方は「さんげ」です。「懺悔」という語が「慙愧懺悔」という形で用いられることが多かったため、「慙愧（ざんぎ）」の影響を受けて「ざんげ」と読まれるようになったと考えられています。

カトリック教会では「ゆるしの秘跡」、正教会では「痛悔機密」と呼ばれ、聖公会などでも用いられるものの、全ての教派で日常的に用いられる用語ではありません。

懺悔は、宗教における重要な実践であり、自身の罪や過ちと向き合い、心の平安を得るための手段です。それぞれの宗教における具体的な方法や意味合いは異なりますが、普遍的な人間の心の機微を反映しているといえます。

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