戎橋松竹

戎橋松竹（えびすばししょうちく）について

戎橋松竹は、大阪市中央区に位置していた演芸場で、かつて大阪で唯一の寄席としてその名を馳せました。この劇場は、千日土地建物が経営し、その後は千土地興行を経て日本ドリーム観光に引き継がれました。愛称として戎松（えびしょう、えびまつ）とも呼ばれ、多くの生粋の芸人たちがその舞台に立ちました。

歴史の背景

1947年、松竹の創業者である白井松次郎が映画館を改装し、戎橋松竹としての新たな門出を迎えました。背景には、1945年10月に行われた「上方落語を聴く会」が影響しています。このイベントがきっかけとなり、白井は1946年から「上方趣味大阪落語の会」を数回実施し、集客の成功を収めました。戦後、大阪大空襲により吉本興業が演芸場を失っていたため、白井は寄席経営への挑戦を決意しました。戎橋松竹は1947年9月11日に開場し、瞬く間に地域の文化の中心として定着しました。

開場当初、漫談家の花月亭九里丸や漫才師の笑福亭松鶴らが中心となり、多くの演芸人が集まりました。オープニングイベントとしては、久里丸の発案による「船乗込み」が行われ、かつての道頓堀での芝居興行の雰囲気を再現しました。その後、戎橋松竹は戦後の上方落語界を支える重要な舞台となり、著名な落語家や芸人たちが次々と登場しました。

舞台の特性

戎橋松竹の定員は約250席で、バラック造りの劇場でしたが、2階には「松葉」と呼ばれる宿泊所があり、東京からの芸人も宿泊できる環境が整っていました。当初は全席指定の完全入れ替え制を採用していましたが、次第に普通の団体客が入れるようになり、観客のニーズの変化に伴って賑やかな色物が好まれるようになったといいます。3代目桂米朝は「末期になると、高座が賑やかになっていった」と証言しています。

1951年以降は朝日放送と提携し、舞台中継が行われるようになりました。これにより、戎橋松竹の魅力がさらに広がり、多くの人々がその舞台に足を運ぶこととなりました。

環境の変化と閉鎖

戎橋松竹の支配人であった勝忠男は、1954年に独立し、新たに独自のプロダクションを設立しました。そして千土地は、残ったレギュラー陣を専属化して新たな番組編成を行うことになりました。しかし、その頃には大阪歌舞伎座の移転計画が進行し、1956年または1957年に戎橋松竹は閉館する運命を辿りました。現在では、その跡地は近鉄難波ビルとして存在し、地下は大阪難波駅の一部となっています。

かつての芸人たち

戎橋松竹には多くの著名な芸人たちが在籍していました。漫才や落語、奇術、曲芸など、幅広いジャンルの演者教育が行われました。特に、落語の四天王や中田ダイマル・ラケットなど、日本の演芸界に影響を与える多くの才能がここから巣立ちました。演芸場の役割を果たしながら、当時の大阪の文化の交流の場となっていたのです。

このように、戎橋松竹は大阪演芸界において重要な役割を果たしました。現代においてもその歴史は語り継がれ、上方落語の発展に寄与した劇場として、今なお多くの人々の記憶に残っています。

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