花月亭九里丸

花月亭九里丸の生涯と業績

花月亭九里丸（かげつてい くりまる、本名：渡辺力蔵）は、1891年10月10日に大阪市南区西賑町で生まれました。彼は漫談家として知られ、その独特なスタイルで多くの人々を魅了しました。父は大阪初の楽隊を持つチンドンマンの丹波家九里丸で、九里丸も幼少期より父に同行し、九州や四国での営業を経験しました。この際、多くのアイデアが形成され、後の漫談に活かされることとなります。

幼少期、九里丸は小説家の直木三十五と親友であり、三十五の随筆の中にも彼の思い出が綴られています。また、彼が育った長屋には、後の名人である3代目桂文三も住んでいました。

九里丸は1916年に三升小紋（後の2代目三升紋弥）に入門し、漫談の道を歩み始めます。初期においては「大八会」や「浪花落語反対派」に参加し、1922年には吉本興業に買収され、花月亭九里丸を名乗ることとなります。大辻司郎に師事し、大阪では初の漫談家として注目を浴び、「金色夜叉」を大阪弁で演じるなど独自のスタイルをおしました。

1934年頃には自身の明朗塾を開き後進を指導。また、新作漫才を書く活動も行っていました。太平洋戦争後、九里丸はかつての父の名を再び名乗り、5代目笑福亭松鶴と共に戎橋松竹の演芸場への転向に尽力しました。1947年には船乗り込みのイベントを提案し、戎橋松竹で開催されましたが、1948年頃に松鶴との意見の不一致から「浪花新生三友派」を結成します。しかし、この活動は長続きせず、1949年には「関西演芸協会」として元のグループに戻ることになりました。

九里丸は漫談のスタイルを維持しつつ、さらなる活動を続けました。1953年には屋号を「丹波家」から「花月亭」に戻し、業界内でも影響力を持ち続けました。晩年には数々の著書を残し、特に『すかたん名物男』は彼自身の語りから生まれた作品となっており、映画化もされています。

1961年には道頓堀の中座で引退披露興行を行い、その後まもなく高血圧により亡くなります。彼の墓所は京都の宇治市にあり、戒名には「芸咲院漫譚栗苑居士」が付けられています。

弟子たちにはクリカワ、クリスケ、九里夫、みどり、西条凡児などがいて、彼のスタイルは後世にも続いています。また、花月亭九里丸の名は今でも「河内亭九里丸」として受け継がれ、彼の功績は語り継がれているのです。1997年度には第2回上方演芸の殿堂にも選出され、その存在は関西の演芸界において決して忘れられることはありません。

九里丸の芸風は独特であり、漫談や百面相を中心に発展しました。彼の口跡が特徴的であり、そのスタイルは多くのファンに親しまれることとなりました。九里丸はまた、温泉劇場の名称変更に尽力し、関西演芸界において多大な影響を及ぼしました。成田山不動尊には彼が建立した「笑魂塚」という記念碑もあり、夏には「笑魂まつり」が開催されています。彼の業績は現在も多くの人々によって語り継がれています。

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