成城高等学校 (旧制)

旧制成城高等学校：自由と文化薫る名門校の歴史

1926年、東京府北多摩郡砧村（現在の東京都世田谷区成城）に私立旧制成城高等学校が誕生しました。文部官僚・教育者として名高い沢柳政太郎氏が設立した成城学園がその母体となり、改正高等学校令に則って設立された7年制の学校です。国内の私立旧制高校の中でも最も遅い設立となりました。

成城第二中学校から成城高等学校へ

成城高等学校の前身は、1922年4月に開校した旧制成城第二中学校です。当初は東京市牛込区（現在の東京都新宿区）にありましたが、1925年には現在の世田谷区成城に移転しました。翌年には成城第二中学校は成城高等学校の尋常科に改編され、歴史に幕を閉じました。

独自の校風と著名な卒業生

成城高等学校は、紺色の背広服にネクタイ、独特のお釜帽子という制服で知られていました。自由で文化的・芸術的な校風が特徴で、生徒たちは「成城ボーイ」と呼ばれ、その洗練された雰囲気で注目を集めました。

その自由な校風の中で育まれた卒業生は、各界で活躍する人材を輩出しました。文学分野では安部公房、大岡昇平といった巨匠、演劇や映画監督の世界では児玉進、堀川弘通、富本壮吉などが名を連ねます。さらに、法学者、政治学者、経済学者、医学博士、音楽家、そしてスポーツ選手など、多様な分野で日本の発展に貢献した卒業生が数多く存在します。

文化・学術の薫り高い教育

1925年には、ドイツの哲学者パウル・ナトルプの蔵書を購入し、「ナトルプ文庫」として現在も成城大学図書館に所蔵されています。これは、学校が積極的に学術を重視していたことを示す象徴的な出来事といえます。

校内には馬場や音楽ホールが設けられ、生徒たちは豊かな文化に触れる機会に恵まれました。また、寄宿舎「青雲寮」が設置されるなど、充実した環境が整えられていました。

新制高校・大学への発展

高等科は新制成城大学、尋常科は成城高等女学校とともに、現在存在する成城学園中学校高等学校へと引き継がれました。1950年に旧制成城高等学校は廃止されましたが、その精神は現代の成城学園にしっかりと受け継がれています。

沿革と主要な出来事

1917年4月: 沢柳政太郎が成城小学校を開設。これが成城学園の始まりとなります。
1922年4月: 成城第二中学校開校。
1925年: 成城高等学校の設立趣意書が発表。ナトルプ文庫の購入。
1926年3月: 成城第二中学校卒業式。成城高等学校設立認可。
1926年4月: 成城高等学校開校。
1927年4月: 小田原急行鉄道小田原線・成城学園前駅開業。
1927年11月: 校歌発表。
1929年3月: 第1回卒業式。
1930年10月: 小原国芳校長が欧米視察旅行に出発。
1931年: デンマーク体操創案者ニルス・ブック来校。学内紛争の端緒となる「自学問題」「学校消費組合問題」をめぐる座談会開催。左翼学生検束事件発生。
1933年4月: 小原校長退任、学内紛争（小原事件）発生。
1933年: 制服・制帽制定。
1947年: 新制成城学園中学校設立。
1948年: 新制成城学園高等学校設立。東京連合大学の共立構想が頓挫。
1950年2月20日: 新制成城大学設立認可。
1950年3月: 最後の卒業式。旧制成城高等学校廃止。
1950年4月1日: 成城大学開学。

校長一覧

初代：沢柳政太郎
2代：小原国芳
3代：三沢糾
* 4代：銅直勇

校地

成城高等学校の校地は、新制大学、幼稚園、初等学校、中学校、高等学校へと受け継がれ、現在では「成城キャンパス」と呼ばれています。

参考文献

本稿の作成にあたり、書籍や論文などを参考にさせていただきました。詳細は本文中に明記しています。

結論

旧制成城高等学校は、自由な校風と質の高い教育で知られる名門校でした。多くの著名な卒業生を輩出し、その歴史は現代の成城学園に引き継がれ、発展を続けています。

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