成層圏準2年周期振動

成層圏準2年周期振動（QBO）とは？

地球の赤道付近、成層圏において、およそ2年周期で東風と西風が交互に卓越する現象を、成層圏準2年周期振動（Quasi-Biennial Oscillation, QBO）といいます。この規則的な風系の変動は、1950年代にアメリカのR.J. ReedとイギリスのR.A. Ebdonによってそれぞれ独立に発見されました。

QBOの特性

QBOは、高度約40～50kmの成層圏界面付近で最も顕著に現れ、その後下層へと下降していきます。対流圏界面付近ではその影響はほとんど見られません。風向きの変化は、赤道付近で最も大きく、南北約20度の範囲に広がりますが、それ以上の高緯度地域では観測されにくくなります。

東風と西風のピーク時の風速は、西風が約20m/s、東風が約30m/s程度です。一周期の期間はおよそ2年から2年半、平均すると約26ヶ月です。

QBO発生のメカニズム

QBOの発生メカニズムは、対流圏から成層圏へと伝播する重力波との関連性が深く関わっているとされています。対流圏で発生した重力波は、西向きまたは東向きに伝播し、成層圏に到達します。

成層圏の風が東風の場合、西向きに伝播する重力波は成層圏で吸収され、東向きに伝播する重力波のみが上空へと進みます。この東向き重力波が「砕波」と呼ばれる現象を起こすと、西風を作るような運動量が成層圏に与えられ、結果として上層の風向きが西風へと変化します。

逆に、成層圏の風が西風の場合には、東向き重力波が吸収され、西向き重力波のみが上空へと伝播します。この西向き重力波が砕波すると、東風を作る運動量が与えられ、上層の風向きは東風へと変化します。

このように、重力波の伝播と砕波による運動量の付加が繰り返し起こることで、東風と西風の周期的な交代がもたらされ、QBOが形成されると考えられています。

QBOと関連現象

成層圏で吸収しきれなかった重力波の一部は、さらに上空の中間圏へと伝播し、中間圏準2年周期変動（MQBO）を引き起こすことが知られています。また、QBOは地球規模の気象現象に影響を及ぼし、エルニーニョ現象などのテレコネクションとも関連していると考えられています。

まとめ

QBOは、地球大気における重要な現象であり、そのメカニズムの解明は気象学における重要な課題です。今後も、観測データの蓄積と数値シミュレーション技術の発展を通じて、QBOのより詳細な理解が深まることが期待されています。QBOの研究は、地球全体の気候変動予測の精度向上にも大きく貢献する可能性を秘めています。

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