成美堂書店

成美堂書店（せいびどうしょてん）は、明治時代に岐阜県で誕生し、主に教科書の出版を事業としていた、かつて存在した日本の出版社です。

創業と屋号

成美堂書店は、明治時代初頭、笠松町出身で米穀商を営んでいた三浦源助氏によって創業されました。この事業開始のきっかけは、当時の岐阜県の県参事（後に県知事を務めた）であった小崎利準氏の勧めによるものとされています。また、「成美堂」という屋号も、この小崎利準氏によって名付けられたと伝えられています。

事業内容と主な出版物

成美堂書店は、設立当初から一貫して教育分野、特に教科書の取り扱いに重点を置いていました。地理、数学、植物学など、幅広い分野の教科書や参考書を出版しており、当時の教育現場に貢献しました。代表的な出版物としては、以下のものが挙げられます。

『輿地誌略』（よちしりゃく） - 1870年（明治3年）刊
『数学三千題』（すうがくさんぜんだい） - 1887年（明治20年）刊
* 『草木図説』（そうもくとせつ） - 1907年（明治40年）刊

これらの書籍は、当時の学習内容や教育水準を知る上で貴重な資料となっています。

店舗の変遷

創業当初、成美堂書店の店舗は岐阜市米屋町に置かれていました。しかし、1891年（明治24年）に発生した濃尾震災により店舗は焼失してしまいました。震災からの復興後、店舗は岐阜市多賀町に移転し、引き続き営業を続けました。

現在への系譜

成美堂書店の事業は、その後の時代にいくつかの形で受け継がれています。

まず、現在岐阜市坂井町に所在する教科書販売会社「岐阜県教販」は、成美堂書店の後身にあたるとされています。近年まで、創業者の三浦源助氏の子孫が同社の社長を務めていた時期もあったと記録されています。

また、成美堂書店は東京にも事業を展開していました。1886年（明治19年）には、河出静一郎氏によって東京支店が日本橋に設立されました。この東京支店が、現在の著名な出版社である河出書房の始まりとなりました。

さらに、現在東京に存在する英語教科書の出版社である「株式会社成美堂」も、成美堂書店の名を受け継いでいます。これは、河出書房の二代目社長であった河出孝雄氏が、そのルーツである成美堂の名を残したいという希望により、新たな出版社として設立された際に名付けられたものです。

このように、成美堂書店は岐阜で教育出版の礎を築き、その事業や名称は、時代を経て形を変えながらも、現在の教育関連事業や出版文化の中にその系譜を見出すことができる歴史的な出版社と言えます。

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