成道会

成道会（じょうどうえ）

成道会（じょうどうえ）は、仏教を開いた釈迦牟尼（しゃかむに）が、長い苦行と探求の末に最終的な悟りである「成道（じょうどう）」を達成したことを記念し、その偉大な功績を称えるために行われる仏教の法要です。

成道の意義

成道とは、釈迦が現在のインドにあるブッダガヤの地で、菩提樹の下で深く坐禅に入り、一切の迷いを断ち切って真理を悟り、仏陀（完全に目覚めた者）となった出来事を指します。これは仏教の歴史における最も根源的な出来事であり、苦しみからの解脱の道が示された瞬間として、仏教徒にとって計り知れない重要性を持っています。成道会は、この悟りを開いた日を記念し、仏陀の智慧と慈悲を偲ぶとともに、私たち自身もまた仏陀の道を歩むことへの誓いを新たにする機会となります。

開催される時期と名称

成道会がいつ行われるかは、仏教が伝わった地域や宗派によって、伝えられる時期に違いが見られます。

日本の伝統：臘八会

日本の多くの仏教宗派では、釈迦が旧暦の12月8日に成道したという古来からの伝承に基づき、この日を中心に成道会を営みます。旧暦12月は「臘月（ろうげつ）」とも呼ばれることから、成道会はしばしば「臘八会（ろうはちえ）」とも称されます。この日には、全国の寺院で釈迦への報恩感謝の法要が執り行われ、仏像に花や灯明が供えられ、読経や仏陀の生涯についての説法などが行われます。

その他の伝承

中国で編纂された歴史書の中には、釈迦が旧暦の2月8日に成道したと記されているものもあります。このような日付の違いは、仏教が様々な文化圏に広がる過程で、各地の暦や伝承が影響を与え合った結果と考えられます。

南伝仏教圏：ウェーサク祭の一部

スリランカやタイ、ミャンマーなどの南伝仏教が盛んな国々では、成道は釈迦の誕生や入滅（涅槃）と同じく、仏教徒にとって一年で最も重要な祝祭であるウェーサク祭の中で祝われます。ウェーサク祭は、通常グレゴリオ暦の5月の満月の日に営まれ、釈迦の一生における三大聖日が一挙に記念されます。この日には、寺院への参詣や布施、灯籠流しなど、様々な功徳を積むための行事が盛大に行われます。

臘八接心という修行

特に禅宗の僧堂（修行道場）においては、成道を記念する期間として、旧暦12月1日から8日までの8日間にわたる「臘八接心（ろうはちせっしん）」または「臘八大接心（ろうはちおおぜっしん）」という集中的な修行が行われます。これは、釈迦が悟りを開く直前に行った厳しい坐禅と探求の道のりを追体験することを目的とした、非常に厳格な実践です。

臘八接心の期間中は、修行僧たちは昼夜を問わずひたすら坐禅に打ち込みます。食事や睡眠などの生理的な活動も最低限に抑えられ、特に睡眠時であっても結跏趺坐（けっかふざ）または半跏趺坐（はんかふざ）の姿勢を保ったまま仮眠をとるなど、徹底した自己規律のもとで行われます。この過酷な修行を通して、自己の限界に挑戦し、煩悩を断ち切り、釈迦が成道に至った境地への一歩でも近づこうと努めます。

現代における成道会の意義

現代社会において、成道会は過去の出来事を追慕するだけでなく、私たち自身が仏陀の教えに立ち返り、日々の生活の中でどのように仏道を行じるべきかを省みる大切な機会を提供しています。特に、物質文明の中で失われがちな精神的な豊かさや内面の平和を求める上で、釈迦の成道という根本に立ち返る成道会や、自己と徹底的に向き合う臘八接心のような修行は、現代にも通じる深い意義を持っていると言えるでしょう。

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