戦争と平和 (1967年の映画)

戦争と平和：ソ連が世界に贈った歴史超大作

1965年から1967年にかけて公開された映画『戦争と平和』（Война и мир）は、レフ・トルストイの同名小説を原作とするソ連の歴史超大作です。監督・脚本・主演を務めたのはセルゲイ・ボンダルチュク。6時間半を超える全4部作からなり、12万人を超えるエキストラを動員した壮大な戦闘シーンは、当時としては前代未聞のスケールでした。セリフのある役だけでも559人に及び、国家事業として製作されたこの作品は、第4回モスクワ国際映画祭最優秀作品賞、第41回米国アカデミー賞外国語映画賞など、数々の映画賞を受賞しています。

物語：愛と戦争、そして運命

この映画は、原作小説を大胆に再構成し、ピエール・ベズーホフ、アンドレイ・ボルコンスキー、ナターシャ・ロストワの3人を中心に物語が展開されます。他の登場人物のエピソードは大幅に省略されていますが、それでも原作の魅力を損なうことなく、彼らの複雑な愛憎、運命、そして戦争の残酷さを鮮やかに描き出しています。

第1部：アンドレイ・ボルコンスキー

1805年、ナポレオン率いるフランス軍がロシアの国境に迫る中、放蕩生活を送っていたピエールと、ナポレオン戦争に参加するアンドレイの姿が描かれます。アウステルリッツの戦いで重傷を負ったアンドレイは、人生の虚しさを悟り、やがて妻の死も経験します。

第2部：ナターシャ・ロストワ

18歳になったナターシャは、アンドレイと恋に落ちます。しかし、婚約期間中に別の男性に惹かれ、スキャンダルを起こしてしまうナターシャ。失意のどん底に陥った彼女は、ピエールの献身的な愛情に触れ、新たな希望を見出していきます。

第3部：1812年

1812年、ナポレオンのロシア侵攻が始まります。ボロジノの戦いを中心に、祖国のために戦うアンドレイと、戦争の恐ろしさを目の当たりにするピエールの姿が描かれます。壮絶な戦闘シーンは、映画史に残る名場面となっています。

第4部：ピエール・ベズーホフ

モスクワ陥落後、ピエールはフランス軍に捕らえられます。しかし、彼は捕虜生活の中で、農民兵プラトン・カラターエフとの出会いを経て、人生の意味を見出していきます。一方、アンドレイはナターシャと再会し、愛を確かめ合いながら息を引き取ります。ナポレオンの敗走、そしてロシアの勝利へと物語は進んでいきます。最後は、ピエールとナターシャの再会という、希望に満ちた未来を示唆して幕を閉じます。

制作：国家を挙げての壮大なプロジェクト

この映画の制作には、莫大な費用と労力が費やされました。製作費は3,260万ルーブル（当時のドル換算で約3,600万ドル）に上り、12万人を超えるエキストラや1500頭の馬、最先端の撮影技術などが投入されました。特にボロジノの戦いの再現には、実際の戦場を用いた2年間の撮影が行われ、映画史に残る壮大なスケールを誇っています。

キャストと反響

ピエール役を演じたセルゲイ・ボンダルチュク、ナターシャ役にはオーディションで選ばれたリュドミラ・サベーリエワ、アンドレイ役はヴァチェスラフ・チーホノフが務め、豪華なキャスト陣が作品に深みを与えています。ソ連国内では1億3500万人以上が鑑賞し、世界117カ国で公開されました。Rotten Tomatoesでは、18件の評論全てが高く評価しており、平均して10点満点中8.97点という高い評価を得ています。

日本での公開と評価

日本では第1部と第2部が「第一部」、第3部と第4部が「完結篇」として2部構成で公開されました。1974年にはテレビ初放映もされ、現在でも高い人気を誇る名作として、多くの人々に愛され続けています。

『戦争と平和』は、単なる戦争映画を超えた、人間の愛と運命、そして歴史の重みを深く刻み込んだ傑作と言えるでしょう。

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