戦時緊急措置法

戦時緊急措置法の概要

戦時緊急措置法（せんじきんきゅうそちほう）は、1945年6月22日に日本で制定された法律であり、当時の政府に対して広範な命令権を付与したものです。この法令は、太平洋戦争の末期に、本土決戦を覚悟した日本の政府が、さまざまな緊急措置を取るための法的根拠として位置付けられました。公布と同時に、植民地も含む全域で施行されました。

背景

戦時緊急措置法の制定に至る背景には、大日本帝国憲法第31条に基づく非常大権が関わっています。非常大権は、戦争や災害など特異な事態において、政府が迅速に措置を講じるために必要とされる権限ですが、その具体的な内容については憲法学者の意見が一致していなかったため、歴史的に不透明な部分が多くありました。

さらに、非常大権が行使された後、日本が敗北した場合、戦争責任が昭和天皇に問われる可能性があったため、法律として形式化することが選ばれました。これによって帝国議会にも責任を負わせる狙いがあったとされています。

法律の内容

戦時緊急措置法は、「軍需生産の維持および増強」「生活必需物資の確保」「防衛の強化」など6つの分野において、政府に命令や措置を行う権限を与えました。この法の下で発せられる命令は、既存の法律よりも優先されるため、政府は実質的に立法権を握ることができる仕組みとなっていました。

法案は、1945年6月に行われた第87回帝国議会で提案されましたが、議会としては事実上の全権委任法であるとして強い反発がありました。そのため、議会は2回の会期延長を行い、政府は結局、12名ずつの副委員の意見を求める形で妥協を余儀なくされました。これは、政府に対する監視の意味合いも含まれていました。

施行と影響

この法に基づき、政府は1945年7月以降に緊急の土地収用や増税、さらには実質的な強制労働を課すための5つの勅令を発布しました。こうした措置は、戦争の激化に伴い、国家総動員を行うために不可欠とされましたが、同年8月15日に日本が降伏したことにより、戦時緊急措置法は実質的に機能することがありませんでした。

1946年4月1日、国家総動員法および戦時緊急措置法廃止法律によってこの法律は廃止されました。

参考文献

• - 渡部徹『日本近現代史事典』（東洋経済新報社 1979年）
• - 福島新吾『国史大辞典 8』（吉川弘文館 1987年）
• - 芳井研一『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）

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