戦略情報局

戦略情報局（OSS）: CIAの影に潜む、知られざる諜報機関

第二次世界大戦下のアメリカ合衆国において、戦略情報局（Office of Strategic Services、略称：OSS）は、その名を歴史に刻む重要な役割を担いました。CIAの前身として知られるOSSですが、その活動は諜報活動にとどまらず、プロパガンダ、破壊工作、戦後計画策定など多岐にわたるものでした。本稿では、OSSの設立から解散、そしてCIAへの変遷までの歴史を詳細にたどり、その活動を多角的に考察します。

OSSの設立と初期の活動

OSSは1942年6月13日、情報調整局（OCOI）の後身として設立されました。初代長官には、前身である情報調整官（COI）を務めたウィリアム・ドノバン少将が就任。陸軍将兵を機関員として採用した草創期を経て、大戦参戦後は大学生などを多数徴募し、徹底した訓練を施しました。初期の機関員は良家の子弟が多かったことから、「Oh So Social（オー・ソー・ソーシャル）」と揶揄されたという逸話も残されています。

OSSの活動は主にヨーロッパ戦線と太平洋戦線に集中しました。現地人によるレジスタンスの設立支援、敵地への破壊工作、戦略情報の収集・分析など、多様な任務を遂行。その活動範囲は枢軸国支配地域の全域に及びました。近年公開された資料からは、著名な俳優やスポーツ選手などもOSS工作員として活動していたことが明らかになり、その意外な側面も注目されています。

主要な作戦と活動事例

OSSは数々の重要な作戦を実行しました。その中でも特に注目すべきは、対日戦線における「オリビア計画」と「イーグル・プロジェクト」です。

オリビア計画は、中国、満州、アメリカ在住の朝鮮人をカナダで訓練し、対日戦線に送り込むというものでしたが、蔣介石の情報機関との衝突やスティルウェルの反対などにより、思うように進展しませんでした。

イーグル・プロジェクトは、朝鮮人学徒隊員を諜報員として訓練し、朝鮮半島各地の重要拠点に潜入させる計画でした。日本軍の軍事施設、交通網などの情報収集、そして終戦後の大衆蜂起支援を目的としていましたが、日本のポツダム宣言受諾により、作戦は変更を余儀なくされました。最終的に、東北野戦司令部の編成、情報収集、捕虜救護といった新たな任務へと転換しました。

タイ王国における活動も特筆すべきです。駐米大使セーニー・プラーモートの協力の下、タイ人留学生を組織し、「自由タイ運動」を展開。終戦時には5万人以上のレジスタンスを組織するまでに至りました。現在も有名なタイ・シルクブランドの創立者、ジム・トンプソンもOSSのバンコク支局長として活動していた人物の一人です。

さらに、真珠湾攻撃後には日系一世・二世要員による情報活動や、ビルマ周辺の山岳民族との協力、海南島での捕虜解放など、多様な作戦が実施されました。

戦後とCIAへの移行

第二次世界大戦終結後、OSSは徐々に縮小し、SSU（戦略諜報部隊）、CIG（中央情報グループ）などを経て、1947年にCIAへと改組されました。OSSの活動は、戦後日本の統治にも影響を与えたとされ、アメリカに亡命したフランクフルト学派の知識人などもOSS顧問として関与していました。

結論

戦略情報局（OSS）は、その活動内容、規模、そして歴史的意義において、CIAの前身としてだけでなく、アメリカ諜報史の中でも極めて重要な存在でした。その活動は、多様な作戦、国際的な協力関係、そして数多くの困難と成功を物語っています。本稿が、OSSという謎めいた組織の一端を垣間見せるきっかけとなれば幸いです。OSSの活動は、現代の国際情勢を考える上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。 様々な資料や研究成果を参考に、今後もOSSに関する研究は続けられていくことでしょう。

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