戦車闘争 (映画)

映画『戦車闘争』について

『戦車闘争』（せんしゃとうそう）は、2020年に公開された辻豊史監督による日本ドキュメンタリー映画です。この作品は、1972年に神奈川県相模原市から横浜市にかけて展開された戦車搬出阻止闘争に焦点を当てており、副題として『SAGAMIHARA,YOKOHAMA 1972-20XX』が付けられています。制作には、プロデューサーの小池和洋が深く関与し、54人もの証言者からのインタビューを基に構成されています。

映画の内容

『戦車闘争』では、当時の市民運動に参加した一般の市民から、運動を取り締まった機動隊、そして米軍依頼で戦車を運搬した日本の業者に至るまで、さまざまな立場の人々の証言を集めています。また、地域の商店主や政治評論家、歴史家などの専門家からも意見を受け取り、この社会的運動がどのように理解されるべきかについて多面的に考察しています。

さらに、映画は当時の8ミリフィルムや写真、記事などの資料を組み合わせ、視覚的に観客に伝えます。プロデューサー小池は相模原での人脈を活かし、数年にわたる準備を経てこの映画を実現しました。ナレーションには泉谷しげるが起用され、当時の風景やフォークゲリラの様子を詳しく語っています。

映画の後半では、この闘争の背景にある米軍基地問題について掘り下げ、多様な研究者の見解が紹介されます。栗田尚弥は「日本はアメリカの不沈空母」と述べ、伊勢﨑賢治は「日本がアメリカの軍事部品であることが憲法九条の平和につながる」といった意見を示しています。これにより、映画は戦争と平和、国際関係の複雑さを浮き彫りにしています。

評価

この作品に対する評価も多岐にわたります。伊勢崎賢治は、日米地位協定やジブチ問題を扱った点を評価しつつも、日ジブチ協定を無視した点に批判を述べました。特に、自衛隊が国外での行動に対して日本国内法が適用されないという矛盾を指摘し、これが日本に特有の問題であることを訴えています。

一方で、マエキタミヤコは、映画の内容を「きわどいがほのぼのした不思議なテイスト」と評し、独特な編集スタイルや音楽に対する感想を述べました。特に、照明やカメラ、インタビュアーが画面に映り込むマルチカメラの手法がユニークであると評価します。

スタッフ

この映画の製作には、多数の才能が結集しています。ナレーションを務める泉谷しげるをはじめ、監督の辻豊史、プロデューサーの小池和洋、金子尚樹など、多くの貢献者がいます。また、音楽には金澤美也子や植村昌弘などが参加し、映画の雰囲気を一層引き立てています。

結論

『戦車闘争』は、単なる歴史の再現ではなく、過去の出来事を通じて現代社会の問題を問い直す重要なドキュメンタリー映画です。この作品を通じて、戦争と平和についての理解を深めるきっかけを得ることができるでしょう。さまざまな証言と映像資料を元に、複雑な社会的背景が描かれているため、多くの観客にとって考えさせられる作品となっています。

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